▽ 『安珍と清姫』・・・紀州真砂の里の庄司清継(見明凡太郎)の娘清姫(若尾文子)は、その美貌と勝気で男を近づけなかった。あるときのこと、狩りに出た清姫は弓の手元が狂って、道成寺へ参拝に来た旅の僧安珍(市川雷蔵)を傷つけてしまった。すぐに館へ運んで清姫は安珍の介抱をしたが、安珍の気高さと美しさに清姫は打たれたようだった。

 山間の出湯に傷をいやす安珍に、清姫は恋心を切々と訴えた。安珍も一瞬清姫に心を奪われそうだったが、求道の身を考えて夢中で 経文をとなえた。しかし、いつか安珍は清姫をかたく抱きしめていた。興奮がさめると、安珍は心がくるしくなった。そして最後の力をふりしぼって、煩悩をぬぐい去ろうとした。

 そのころ、清継は娘の清姫と関屋の長者友綱(片山明彦)の縁組をとり決めていた。清姫は父の願いをかたくことわった。そして道成寺へ引き返す安珍のあとを追った。野も山も、川も清姫の眼中にはなかった。道成寺へ向かう安珍の耳にふと清姫の声がきこえた。振り返ると清姫が追ってくるではないか。監督島耕二。

▽みどころ・・・恋にこがれた南国の乙女の執念。

▽併映『夜は嘘つき』(上映中)=写真は『安珍と清姫』の一場面

 

 

 (サンスポ・大阪版 08/10/60)