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 慶長十四年のポルトガル船焼打ちを題材に、移植の海上スペクタクル編として製作する『ジャン有馬の襲撃』は伊藤大輔監督の発案で、非道な仕打ちに怒る日本人の憤激を青年大名有馬晴信に託して小気味のよい娯楽映画にしようというのが狙いです。

 男と男の真情、青年の情熱を強く描いて線の太い楽しめる作品。

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 本年度、各種映画コンクールの男優賞を一手にさらい、時代劇俳優には例のない演技派スタアのタイトルを背負って、目覚しい活躍を続ける大映の市川雷蔵は、いま伊藤大輔監督の野心作『ジャン・有馬の襲撃』に出演している。

 この映画で雷蔵は初めてのキリシタン大名の役にとりくんで、研究熱心なところを見せているが、同監督とのコンビは昨年の『弁天小僧』で折紙つきのものであるだけに、その張りきりようはまた格別。以下の撮影日記にも、彼らしいファイトがのぞいている。                        

某月某日  市川雷蔵

 『ジャン・有馬の襲撃』は、伊藤大輔監督が十数年来温めておられた企画とか。そんな大切な企画を私に下さるというのだから、私の責任は重大だ。何としても終生の代表作として見せる。作品の狙いはラストの黒船襲撃を最大のヤマ場に、行動性をもった有馬晴信という一人の進歩的な青年大名を浮き彫りにしようというもの。

 主人公が立派すぎるほど立派な完全無欠な人間であるだけに、俳優には大へん難しい役どころだ。逆に、そういう人物は人間的に魅力がないということもいえるので、扮装、起居振舞、セリフなど、外観的なものにアクセントをつけて、単調な人間になることを避けなければならない。

 もともとこれはこの時代(1609年)のいくつかの史実をもとに、伊藤先生が映画的にアレンジした物語だが、私が演じることになったので実在の人物(三十代)より、うんと若くして二十代前後の、美しいハイカラな人物にかえられたわけだ。従って扮装は、天草四郎のものを中心に、日本画の武者絵のフンイキを狙う。

 とにかくお盆映画なのだから、裏でスジを通し、表面では痛快颯爽さを押し出して行くつもりだ。

 


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 昨年暮、二年あまりの沈黙を破って『弁天小僧』を製作、見事ヒットをとばしたベテラン伊藤大輔監督が益々好調を続ける市川雷蔵と組んでお盆映画(白黒ワイド)『ジャン・有馬の襲撃』を製作することになった。

 この映画は徳川時代に実際にあった外国船焼打ち事件に取材した映画で、徳川家康統治の時代を背景にして展開される。

 脚本・監督、伊藤大輔、製作、三浦信夫、出演者は市川雷蔵、根上淳、叶順子、弓恵子、山村聰、坂東蓑助、三島雅夫らの多彩な顔ぶれです。

 日本の発展を願う弱冠二十三才の若い大名有馬晴信が気骨のある廻漕問屋の三郎兵衛に命じて台湾との交易をはかる。

 ところが台湾沖でポルトガル船の襲撃をうけて物資は略奪され、三郎兵衛は命からがら逃げのびて、晴信に報告する。温厚な晴信もその仕打ちに憤激、折からポルトガル船が暗礁にのりあげているのを幸いに、陣頭に立って勇敢な奇襲を加えて壊滅させるという物語。

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 敵に捕らえられた父の安否を気づかうクララを慰める晴信と鶴姫

 日本史上初の外国船焼打ち事件をテーマに、美剣士市川雷蔵が青年の情熱と純粋さを描く異色の海上スペクタクル時代劇 

       

晴信の出陣を心配して必死にとめる鶴姫

有馬晴信に扮する市川雷蔵さんの颯爽たる若武者ぶり

 


 

 かいせつ 日本史上初の黒船焼打ち事件を巨匠伊藤大輔監督が、時代劇のチャンピオン市川雷蔵の新たなる魅力を求めて、意欲と野心のメガホンをとる雄大なスペクタクル巨篇です。
・・・物語は、1609年家康の南方貿易の拠点であったポルトガル領マカオ港における日本人虐殺、御朱印船焼打ち事件に端を発し、たまたま長崎に入ってきたこのポルトガル船を、こんどは反対に九州のキリシタン大名、有馬晴信が勇敢な奇襲を加えて焼打ちに成功。蒙古襲来以来初の外国との接触というので有名なこの歴史的事件を中心に幾つかの史実をアレンジしたもので、映画では仮想のイベリア王国を設定し、あくまでフィクションとして扱ったものです。