九月五日、六日は待望の第一回京都大映撮影所見学が行われました。東京よりの参加者百名は、四日の23時30分東京発月光号にて一路西下、そして地方会員さんと京都で合流し、総員百九十一名の大所帯となった。

 天候には恵まれ、京都独特の残暑をいやが上にも味わったが、撮影所と嵯峨・天竜寺で雷蔵さんにお逢いし、一陣の風にも似て、清涼剤としては、もっとも効果のあったものと思われました。

 以下、その模様をご紹介いたしましよう。

 九月五日(金)

 一睡もしなかったにしては、皆嬉々としている。もうここは雷蔵さんのいらっしゃる京都ですもの、仕方ありませんね。三台のバスに分乗して、宿舎・嵯峨天竜寺へ。ここは時代劇には大変おなじみの多い所です。又、玄関は『炎上』で雷蔵さんが始めて驟閣を訪れ、ポケットからおもむろに手紙を出して、中に入って行く所や、玄関を掃除していると乞食が物乞いに来る所など、皆このお寺が使われておりました。

 余談はさておき、これより撮影所へ・・・。まず時間の関係とバス会社の好意で西芳寺(通称苔寺)を拝観いたす事になりました。なにしろ本年最高の暑さにぶつかり、「苔なんかどうでもいいから、早く雷蔵さんに逢わせてくれ」というのが、いつわらざる叫びの様でした。やっとの事で撮影所へ、初めて来た会員さんは勿論、幾度来てもこの正門に立つと、何ともいえない嬉しさがこみ上って来るのは不思議です。中に入ると、加戸敏監督にばったりお逢いし、一寸耳をすまして聞いた所によると「今日“雷蔵後援会”の方々がいらっしゃるというので、11時半に仕事を上げて待っていたんですよ」という事でした。ありがたい事です。私達の後援会のために、撮影という一つの仕事を止めて待っていて下さったのでした。 

 1時にならなければ撮影が始まらないため、取りあえず撮影所内を案内していただく事にした。まず、第四ステージへ、中は『日蓮と蒙古大襲来』の清澄寺のセットで、長谷川一夫さんの日蓮が領民達に教えを説いている所へ、鎌倉武士が乱入して来るシーンでした。約二百人の見学者が入っても充分な広さをもつこのステージは、早撮りの渡辺邦男監督の指図のもとに、この作品の好調振りをうかがうことが出来ました。次に案内されたのが特殊撮影のプールで、人工の波と風を起し、雲を写したスクリーンが動き神風となるわけである。浮んだ船も地平線と仮定される方には小さい船を置き、乗っている人形には一つ一つモーターが仕かけてあり、一斉に櫓をこぎ出す。「東京へ帰ったら、大いに話してやって下さいよ。ここで見ていったのが、映画館で見てプールだとわかったらお代はいらないですよ。ほんまに。」と汗をふきふき説明してくれました。

船より大きい人間  『日蓮と蒙古大襲来』の特撮

 さて次に御案内・・・、西オープンの江戸の町の跡(想像する所によると・・・)を通り、連れて行かれた所が、『人肌孔雀』ラストのお蔵の前の立廻りが撮影された所です。そこから見る京の山々の形は全国の山の形が集まっているので、嵐山が赤城山になったりすると聞かされ、「へぇ、なるほどね」と感心している内に1時になった。

『人肌孔雀』のオープンセットで説明を聞く