春がける強風の吹き荒れたきのうの日曜日に、大映の進出スター市川雷蔵の後援会が山葉ホールで、また、長唄界から映画入りした若山富三郎(新東宝)、勝新太郎(大映)兄弟の舞台が産経ホールと、それぞれにぎやかに開かれた。

 雷蔵は『浅太郎鴉』がアップになった寸暇を見て、後援会“か美なり会”の招きで京都から久しぶりに上京してきたもの。場内は日曜日とあって都内はもちろん、埼玉、神奈川からも十六、七から二十二、三歳ぐらいのファンがどっと押し寄せ、晴着に着飾った姿は、シーズンに先がけてサクラが一斉に開いたようなにぎやかさだった。勝新太郎、林成年、市川和子、苅田とよみらから贈られた花束を抱いて、雷蔵は「ファンの要望に応えて、立派な俳優にならなければ」と顔を紅潮させて、ニコニコ顔だった。

 若山富三郎、勝新太郎の舞台は、父杵屋勝東治主催の“長唄と舞踊の会”に、客分として出演したもの。富三郎と新太郎の兄弟は、映画会社がそれぞれ違っているので、スクリーンの上で顔合せしたことはないが、舞台の上でもこれが兄弟の初顔合せである。兄弟で殺陣「田村」を長唄に乗って演じたほか、また富三郎の長唄、新太郎の三味線で「橋弁慶」を披露した。この「橋弁慶」では、山葉ホールの舞台から雷蔵がかけつけ友情出演した。

 富三郎、新太郎とも映画入りして、長唄界から去っていたので、それぞれ一年半、二年ぶりのお勤めでちょっと調子が合わぬ表情。それでも富三郎は「父の会に出演できて張り切ってやります」と魚が水に帰った嬉しさをたたえ、新太郎のほうは「やはり小さいときからこの世界で育ってきたので、何としても舞台に立つのは嬉しいことです。なつかしいナ」といっていた。この会場もまた、映画界から島崎雪子、峰幸子、池内淳子らから花束が贈られ、スターを目の前にした場内から、終始吐息が洩れていた。(日スポ・東京版 03/26/56)

 

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