去る六月二日〜四日まで一泊二日の第三回大映京都撮影所見学並びに宇治、比叡山コースの旅行は、会の年中行事として催されたが、大変好評のうちに無事終了した。以下どの模様を御覧下さい。

 

数名の会員さんのお見送りをうけて、午後九時十五分発の月光号は東京をあとに一路京都へ。一泊二日の楽しい旅行の模様を、行けなかったあなたにお知らせ致しましょうね。

 三日朝京都へ着くと、各地方から集った会員さんで待合室はいっぱいでした。駅前より五台のバスに分乗して、天下の名勝嵐山天竜寺へ。小休止ののち、再びバスを連ねて大映京都撮影所へのりこみました。

 雷蔵さんにお目にかかれるというのでどの方の顔も嬉しそうな事、私ですか?勿論いわなくってもわかるでしょ、生憎大映の名物男?キンちゃんの案内でなかったため、一寸拍子抜けしましたが、とにかく早く雷蔵さんのお仕事を見たいとおりましたが、丁度ハワイ観光団と重なって待たされる事しばし・・・。やっと第七ステージの大きなトビラが開いて中に入る。冷房がきいていて涼しい事。しかしセットは細長い堀と家の間を、雷蔵さんが新内を流して歩くシーンで、しかもカメラがせまい入口に置かれてあるので、見えるのは雷蔵さんのカツラの先ぐらい、でもいい作品にしていただくには、これも仕方のない事なんだなんて妙なあきらめ方をして外に出ました。

会員に囲まれたその日の雷蔵さん

 いよいよ雷蔵さんを交えての記念撮影会。通称グランプリ広場に班ごとに二百五十人からの会員を並べて、二台のカメラで写さなければ間に合わない始末なんです。

 雷蔵さんの行く方に、写し終わった方とまだ写していない方との人波がゆれて、さすがの広場も会員さんでいっぱい。スタッフルームの窓という窓は撮影所の人達ですずなり、中でも伊藤監督は二階からこの光景を眺めて、ほほえんでいらっしゃいました。そのうちあんんまり皆さんがカメラを向けるものですから、一分間だけ写してもいいとの雷蔵さんのお言葉に、一せいに雷蔵さんのまわりに円陣を作ってパチパチ、前の方ので写した会員さん曰く「“貴女もう写したんでしょ?後ろの方と変って・・・”と交通整理をしながらポーズを作っているのよ」ですって・・・撮影所を後に嵐山で昼食、五時まで自由行動。

会食会も一番初めに箸をとられた

 待望の会食会も、もしかすると雷蔵さんおいでになれないかもしれないという事を聞いて、心配していたんですが、六時一寸前、まだ広間にお膳立てが出来ないうちに雷蔵さんがお見えになり、さかんに空腹を訴えられているんです。そのうち御自分も立って来られて、お汁物を置いたり、御飯のついていない所を調べて下さったり、御協力下さいましていよいよお食事。「御挨拶を」といいますと、「とにかくお腹がすいているから食べてからにしましょう」とおっしゃって、もうパクパクと食べ始めたものですから、皆さんも安心してゆっくりとお料理を味わったということです。

 食後お部屋を変えて座談会に入りましたが、口八丁のキンちゃんをおさえて「私は口から先に生れたんでしょう」とおっしゃって、次の様なお話をなさいました。「私は映画に入る時、五年後には必ず舞台に出るという事を約束したので、八月の舞台はそれを実現するわけですが、今後は決して舞台に出ません。これが初めで最後でしょう」とおっしゃり、又「執念深いというのは女の人より男の方が強いのではないか、特に私はそうですが、次回作の安珍ち清姫はその執念深いこといを表した作品です」「結婚したら、仕事中心に考える亭主になって奥さんを愛しないかもしれない」と云われると皆さんの中から奇声が出ると「いや愛します」と訂正されたのでほっとしたり、現在の政治に対する質問には、若い世代を代表しての心持らしく、御自分の意見をのべていらっしゃる雷蔵さんのお顔はほんとうに美しく輝いておりました。そうして、いつもには見られない、充実した座談会でした。約二時間、たのしい一刻を過して雷蔵さんがお帰りになったその後は、今見たり、聞いたりした雷蔵さんの事で、興奮して語り合っている会員さんが多かった事。