三島由紀夫の「金閣寺」を映画化する市川崑監督、大映作品『炎上』で、主人公の青年僧溝口吾市にふんする市川雷蔵の断髪式が三日朝、大映京撮で栃錦、千代の山、若乃花の三横綱の手で行われた。

 酒井所長、市川監督、雷蔵、鴈治郎らの握手に迎えられ、喜色満面で撮影所入りした三横綱は、同所稲荷神社前に設けられた断髪式会場へ。金ビョウブを背に、紋付羽織ハカマに威儀を正して着席した雷蔵の髪に、千代の山、栃錦、若乃花の順で古式豊かにハサミが入れられたが、雷蔵のホオはハサミごとに紅潮、感激にあふれていた。

 断髪式の後、三横綱に感想を聞くと・・・。

 「時代劇映画が好きでよく見ていたが、特に雷蔵さんのファンだった。雷蔵さんは日ごろからわれわれの部屋に姿をみせて親しくしていたが、たまたま『炎上』で髪を切ることを聞いたので、祝福の意味で、断髪式をかって出たわけです。現在、古式にのっとった断髪式をやっているのは、われわれの世界だけだから、われわれの手で断髪式をやるのが一番いいのではないかと思っている。現代劇初出演の雷蔵さんにより一層の成功を祈っている」

 また雷蔵は

 「私ごときものの断髪式に天下の三横綱の手をわずらわしたことは感激と感謝でいっぱいです。折角の作品ですから、これにすべてをかけて現代劇での新境地を開拓したいと思っています」と語った。

06/05/58 日刊スポ(大阪版)