山本富士子、川口浩、市川雷蔵の大映若手スターと市川寿海が、三十一日の日航下り三便で来福した。福岡大映(公楽改め)の開館にあたり、一、二日の両日、舞台あいさつをしたうえで山本、雷蔵のコンビによる日本舞踊“神田祭”と、川口浩お得意の低音歌謡を披露した。

 一行は板付から宿舎に落着く暇もなく記者会見、踊のけいこにかかった。さらに一日、二日の会場は超満員のため冷房もきかぬ有様で、これら三スターは汗だくの熱演ぶりをみせ、ファンに踊と歌のダイゴ味を満喫させた。

 山本富士子の話 いろんな役をやりたいというのが日ごろの念願だったので、松竹作品『彼岸花』(監督小津安二郎)出演は、とても勉強になりました。出演場面こそ少なかったんですが、軽いコミック調の役で、小津先生から「ことさらに強調しなくても、観客にわからせる演技」のコツといったものを教えていただきました。三役の『人肌孔雀』では、烈しい立回りにも苦労しました。全身アザだらけだったのが、やっとなおったところです。暑いときの立ち回りって苦しいものですね。

 市川雷蔵の話 初の現代劇『炎上』で、ごらんの通り坊主頭になりました。『炎上』の主人公の役は、心理的に相当複雑なので、お客さんにその心理をわかってもらえるか、という点に心を砕きました。次回作品は『日蓮と蒙古大襲来』です。演出の意欲ですか?・・・ありますね。だって映画のなかでは監督業がいちばん面白いんじゃないですか?自分でシナリオを書いてみたいとも思っているんですが、なにぶん才能と時間がありません。

 川口浩の話 “『巨人と玩具』でうたった歌がよかった”ですって?ご冗談でしょう。音痴でなきゃだれだって歌える、その程度ですよ、僕の歌は。次回作のイタリア・ロケ映画が流れちゃって、いま香港でロケする『香港の夜』(監督増村保造)が準備されているようですね。増村さんは何といっても若いし、年配の監督さんにくらべると僕たちと気が合うし、仕事もやりやすいですね。テレビ出演・・・あまり好きじゃありません。

(フクニチスポーツ 08/03/58)