春の集いに寄せて

 待ちに待った集いに喜び勇んで三日の夜行で発つ、心はもう明日の雷さんの影を追う。そのためか今夜の汽車の動きがおそいような気がする。だんだん空が明るくなり始め、東京も間近い・・・。ああ外は春雨だ。いよいよ上野、時計は丁度六時半を指す。まだ千代田公会堂には早すぎる。荷物があり、早速事務所に電話した。朝早いけど心よき引き受け、来る様に・・・外はまさ霧雨だ。春雨じゃ濡れて行こうじゃなくて、車で向島へと向かう。まだ早いため、二時間くらい床で身体を休ませてもらう。昨夜の疲れかトロトロと・・・。朝飯食べる様にと、迎えが見えた。もう雨はどこへやら、上天気。私達の日頃のおこないがよいためと、空を見上げて感謝した。

 さて朝飯、胸が一杯で一膳どうにか食べ、仕度して頂き千代田公会堂に向かう。もう一杯の雷蔵さんファンさすが。私もびっくり喜んだ。一列に並び、記念品を頂き、自分の席につく。待ちに待った時間一杯に幕が開く。司会の芥川さんの御挨拶、次に理事長さんの梅原様。蔭の感謝感嘆の声、それが終り我等の雷さんが颯爽と舞台の左から現われ、マイクの前に立つ。割れんばかりの拍手波のごとく、雷さんの落着いた態度に嬉しそうな顔々、私の方がポーッとしてドキドキ、面白おかしく司会の芥川さんと語り合う。続いて花束贈呈、雷さんの集いに品川隆二、錦之助、林成年さん外、大勢の俳優さん達が見えた。その時も笑いのひとときだった。

 殺陣田村が都合により雷さんの小唄三曲、ここで少々休憩 − 休憩の合間に、役員の阿部さんのお蔭で目と鼻の先で雷さんに逢う事が出来た。雷さんは小唄の時の紋付袴の姿でお逢いした。本当に男の中の男といいたい。ただ無言で、うっとり見とれているうちに時間が来て、楽屋を出た。映画は昼『次男坊鴉』・・・これで三回目、何回見てもやっぱり涙は女にはつきもの、顔を濡らす。愈々、お待ち兼ねの雷さんの舞踊「お祭り」が始まる。すっかりメーキャップした雷さん、ただもう溜息の他何も出ない。きれいな祭り舞台、雷さんの舞台姿、ひっそり静まり、雷さんに何千の目が吸いこまれる、あまりのきれいさにどう書いてよいものか、筆につくせない。ただ胸に秘す事にする。静かに幕が閉まる。最後にサインボール、雷さんはお祭りの扮装で投げる。残念ながら一つも取れない。閉会の辞、昼の部終り、夜の部一旦整理上、場内から出る。昼と同じ第一回休憩の時、阿部さんに無理にお願いして楽屋に行った。この時は雷さんは「お祭り」の扮装だった。水もしたたる美男ぶり、ただうっとりとみとれるばかり。

 あれやこれやと一日を楽しく過し、雷さんの帰られる時間が近づく、閉会の辞を最後に全部終り、雷さんは黒い車の中の人となった。私も押され、一番前に出た。雷さんさようなら、何となくさみしい空から、又、細い小雨が降って来た。車で向島へと向う十二時過ぎまで、役員さん及び会員さんと雷さんの話をし、一時頃、深い眠りに入る。

  (よ志哉5号 ファンの言葉から)