関西旅行記A

 昨夜、夜ふかしをしたせいか床を離れたのが九時頃である。前日留守中に雷蔵さん宅より三度も電話があったと聞いていたので、村上さんが電話をかける。その結果、撮影所は夜間のオープンセット(『花の渡り鳥』)とのこと、六時迄に撮影所に行く約束をする。一日どうして暇をつぶそうかと相談し、雷蔵さん宅を訪問することに一致。時間が早いので宿よりほど近い銀閣寺を見物する。足利将軍全盛時代、金閣寺と並び豪奢を誇ったと云うだけあって立派な建物である。

 宿に帰り、荷物を纏め、駅の一時預りに預け雷蔵さん宅に向う。雷蔵さんマネージャーの森本さんはお留守であったが、お弟子さんの住永さんにお逢いする。小じんまりとした建物で、京都特有の建物である。お二人とも留守とあっては長居無用と思い、お家の前景と門をカメラにおさめおいとまする。雷蔵さん宅より金閣寺が近いと聞き、見物する。金閣寺は二十五年、放火によって焼失し、今年十月十日に完成したもので壁はまばゆいばかりの金光を放ち、思わず「きれい」と歓声を発してしまった。(会員の皆様も明星12月号でご存知のとおり、本当に屋根へ雷蔵さんが上ったのだそうです。屋根には誰も上れないのだそうですが、雷蔵さんが最初にして最後でしょう。)

 三人とも前日より歩きどおしであったせいか、とても疲れを感じてしまい畳の上に座りたい気持ちになる。早く撮影所へと思うのは三人とも同じ、だが六時には間もあり、新京極へ京都雷蔵会の事務所を尋ね、幸い会長の霜中氏が在所中で会の運営について参考になる話を聞く。

 

勝新太郎さん、田坂勝彦監督と『花の渡り鳥』の本読み

雷蔵さんの佐吉とおみねの清水谷薫さん