「太田家、遠田家、ご両家の婚約を発表させていただきます」

 大日本精糖社長藤山勝彦氏の第一声で、市川雷蔵、遠田恭子さんの婚約劇の幕が切って落された。暮れも押し詰まった十二月二十八日 − 赤坂のホテル・ニュージャパン201号室である。雷蔵は濃いチャコールグレイの背広、恭子さんは、明るいブルーのスーツ。日本女子大家政学部児童科三年在学中のお嬢さん。二十一才である。

 雷蔵がこんどの婚約発表にふみ切ったのは、中村錦之助・有馬稲子の結婚に刺激されたといえる。十一月二十七日、錦之助の結婚披露パーティーに出席した雷蔵は、「ボクも人ごとじゃなく、そう独身を続けるわけにはいきませんからね」と率直にその感想を語っていたが、

 「じゃあ、ウワサの遠田恭子さとの結婚は・・・」という質問には、ちょっとあわてたような格好を見せ、

 「ああ、あの娘さんのことネ。ウワサをするのは勝手だけど、こういう問題は婚約を発表したときが、はじめて真実になるのであって、今の段階ではなんとも・・・50パーセントは真実かな」と、ソソクサ姿を消した。どちらにもとれる意味深長な口ぶりだったが、はっきり否定もしなかったのである。

 このときから、雷蔵は、ひそかに、年内に婚約発表を期していたわけだ。

 結婚式は三月二十七日、藤山勝彦氏夫妻の媒酌によって、赤坂のホテル・ニュージャパンで行なわれる。