「雷蔵さんは昨年度、ブルーリボン、キネマ旬報等、多くの演技賞にはどの作品がみとめられたのですか」「炎上・弁天小僧その他の演技となっております。『炎上』は初めての現代劇で」とすかさず「『炎上』よかったぞ」の声に、その方に向って「有難うございます」と頭を下げられたので、場内思わず爆笑。

 終始楽しそうに場内の質問にも気軽に答えて下さり、「歌を唄って下さい」の注文には「唄いたいのですが、伴奏がありませんし、又、私の歌は長唄ですので、とても時間がありません」と笑わして、にごして仕舞われ、又「今度の山田長政の役は?」

 「カムヘーンという青年仕官です。大阪流に云うなれば、かまへんですな」に又又笑。

 「現代劇にもっと出て下さい」と若いお嬢さんの言葉に 「そんなら、あんたが社長になって下さったら」(笑)

 「雷蔵さん素顔の方がキレイよ」と黄色い声がとべば「そうですか、そしたら俳優やめんなりませんな」(笑)

 等々と、あのたくましき青年信長に、そしてお嬢吉三の雷蔵さんに、少しもたかぶらず、ユーモアと親しみを感じさせていたいたひと時でございました。最後にグループより花束を受けられ、司会者に「握手してあげて下さい」と云われて、「あちらへ這入ってからにします」とてれながら、笑いの中にお名残惜しくも幕となりました。春宵一刻値千金。意味は異なるかも知れませぬが、私達ファンにとっては、正にこの名言のピッタリの春宵でございました。

 も早、追憶の世界へと去ったひと時を、車中の人となってからもたぐり寄せつつ、家路へと急ぐ胸に、今一度ゆっくりお嬢吉三を観に行こうとつぶやき、そうだ今四本の映画に張切っていらっしゃるとお聞きしたばっかり・・・。御健康に一段と留意されます様にと夜空に祈りつつ・・・。

(よ志哉11号 ファンの言葉より)