去る五月中旬、名勝の地、高松市で市制七十周年  -1890(明治23)年2月15日市制施行-、市民会館落成の記念祝賀会が行われ、大映スターの大挙出演があり、雷蔵さんは十二日昼・夜二回にわたり、清元「お祭り」を踊られました。

 会では、この機会に近県会員さんとの茶話会を計画。雷蔵さんの心よい御承諾を得て、実現致しました。

 こうしたローカル的な会合は、昨年暮、岐阜大映館落成の折に続いて二度目のことです。

 

 
 曇りの高松港は、早朝の静けさに反してただならぬ気配、それもその筈、吾等の雷蔵さん到着とあって、朝寝坊返上組が暗い内からぞくぞく集まり、胸おどらせての待ち時間。

 主催の市役所関係者も、その出迎えのおびただしさと活気(熱気?)に少々おされ気味。さて、到着時刻午前五時四十分、朝もやで見透しのきかない海上に一生懸命、目をこらす会員さん − 少々心配顔になりかけた時、約十五分遅れて、突然、もやの中から美しく化粧した関西汽船はっぴねす丸が姿を現わした。大勢の乗客にまじって、背広姿の雷蔵さん − 歓迎の声がわく。

 会員代表の差出す花束を「どうもありがとう」と笑顔で受けられる。終始にこやかなほほえみのまま車中の人に −


 ここ祝賀会会場は、市中央部に近代建築の粋をほこる市民会館のホール。今日のプログラムは一週間の記念行事中随一のものとあって、客席をうめる主催者側招待のお客様も、幕開き前からその賑やかさも一入です。

 丹羽・阿井・中村豊の皆さんによる「三番叟」。小林勝彦・中村豊さんの殺陣「田村」につづいて、いよいよ「お祭り」の開幕。前びきの三味線につれ、清元が流れ・・・いきなり鳶頭の雷蔵さんに芸者の浦路洋子・藤原礼子さん等十名の女優陣、祭半纏の親刀会男優多数がからむ豪華さ!

 雷蔵さんの美しさに思わずもれてくる溜息、ためいき、そしてしばし水を打った様な静けさ − と、その時「待ってました!」の掛声「待っていた?待っていたとはありがてェー、おうかたあいつの事だろう」と、うけた雷蔵さんの台詞も名調子!!(この掛声の主は小林勝彦さ、中村豊のお二人と後で判明)

 完全に客席を魅了した舞台でした。