社運をかけて作り上げた超大作『新・平家物語』の見事な成功に、いよいよ意気上る大映京都では、秋風がようやく立ちはじめたばかりに、早くも各社にさきがけて明年度正月作品の製作に着手、その第一弾として、ヤクザ映画黄金篇『花の渡り鳥』を田坂勝彦監督の下に、撮影することになった。しかも、この作品で全ファン待望の長谷川一夫、市川雷蔵、勝新太郎、三大スターが顔を合わせるほか、小暮実千代をはじめとして阿井美千子、夏目俊二、柳永二郎以下、よりすぐりの豪華メンバーをもって固めた配役陣で臨むもの。

 これは長谷川一夫が今東京公演で絶賛を博した、川口松太郎原作「帰って来た男」の映画化で、島帰りのナゾの旅人榛名の清太郎をめぐる、恋と剣と人情の波乱万丈の物語を、大利根流域に展開する正月映画にふさわしい作品で、すでに二十日からクランクイン。

 製作(酒井箴) 原作(川口松太郎) 脚本(犬塚稔) 監督(田坂勝彦) キャスト・榛名の清太郎(長谷川一夫) 小間物屋佐吉(市川雷蔵) 見返りのおぎん(小暮実千代) 蜩の半次(勝新太郎) 鹿島の七兵衛(香川良介) おみね(阿井美千子) 櫓の惣吉(夏目俊二) 岩井屋音蔵(柳永二郎)(デイリースポーツ・大阪版 09/22/55)