野添ひとみ

1937年2月11日/東京都

本名 川口元子 「ひとみ」という名に恥じぬ明眸の持ち主である。スクリーンの向こうから、ひたむきにみつめる瞳のいじらしさに、どれほど多くの男性が心をときめかせたかしれない。

東京中野二中卒業後、松竹音楽学校に入学。52年「うず潮」でデビュー。55年に大映に移籍。当時、市川崑の助監督であった新鋭、増村保造のデビュー作「くちづけ」に出演する幸運をつかんだ。ここで彼女は今までの大船調とはガラリ変わった、乾いたタッチの演出にこたえ、新しい世代の青春劇を溌剌と演じた。

その後も増村作品は「巨人と玩具」「氷壁」「不敵な男」とつづき、彼女は若尾文子につづく看板女優に育っていった。

60年、「くちづけ」以来の共演者で、かねてロマンスを噂されていた川口浩と結婚。二、三の映画に出演したが、引退し家庭の人になった。その後、テレビCMや競馬解説で時折、姿をみせるようになったが、次女の白血病発病から次々と家庭に不幸が襲い、次女の死後、夫川口も亡くなり。彼女自身も亡くなった。

1961.07.12 水戸黄門海を渡る