久子

1906年2月12日/京都府

本名 田坂冨美子 かって日活の娘役スターとして、その初々しさと明朗さで人気の集めたスターである。というよりも、現代の人には巨匠、田坂具隆監督未亡人といったほうが、通りがいいかもしれない。

25年、日活入社。エキストラからスタートした。チャア坊と呼ばれた小娘が、長い下積み生活からぬけ出したのは「巌頭の謎」の主役に抜擢されたときであった。

以後、主として現代劇に出演。人気はトントン拍子に上昇し、当時の日活の看板女優、夏川静江、入江たか子に迫るまでになった。ところが、その人気の頂点で、30年、新鋭監督、田坂具隆と結婚。以後、田坂夫人として幸福な結婚生活を送るかたわら、その年令にふさわしい落ち着いた脇役へと変化していった。

1962.05.27  中山七里