久我美子

1931年1月21日/東京

本名も久我美子だが、読み方が違い、「こがはるこ」。彼女の名とともに思い出すのは、「また逢う日まで」の、ガラス窓越しの接吻シーンである。戦時下の虐げられた青春の悲しさを、切々と訴えたこの名作で、彼女は一挙にスター女優になった。

東宝第一期のニューフェイス出身。旧侯爵家の姫君が、映画入りというので、大変なスキャンダルになったという。デビューは、47年の「四つの恋の物語」清潔な美貌と、華奢な身体で人気は上昇し、50年の「また逢う日まで」で、その人気を決定したのである。

その後51年、東宝を退社して大映入社。ここで成瀬巳喜男の名作「あに・いもうと」と、田中絹代の第1回監督作品「恋文」に出演。冷ややかな美しさと、堅実な演技力で印象深い姿を残した。

平田昭彦とのおしどり夫婦ぶりは人も羨むくらいだったが、先年平田を病で失い、その悲嘆振りは見るも痛々しかった。

1955.09.21  新・平家物語