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 あれ程案じて待ち暮した『炎上』が今日観られると思うと、時間の経つのがもどかしい。今日は十五日、確か京都はお盆で撮影所はお休みの筈、“もしかしたら雷蔵さん、いらっしゃるのかもしれない”何かにつけて、いつも一緒のSさんと夏期休暇を取って、二回目三時の会までの時間待ちの間、スクラップブックの整理をしながら、雷蔵さんの話ばかり。そこへ電話で、一回目一時の会の券が入ったからという連絡で、時計を見たら十一時半。それから車で券を買いに行き、産経へ着いたのが十二時四十五分。もう並んでいる人はない。

 「一階は空席が殆んどないので二階へ」といわれたけれど、もしかして雷蔵さんが見えられた時と考えて、ワイドで少々つらいなと思ったけれど最前列に座った。

 主催者の挨拶、宣伝映画が終って、場内が明るくなって、マイクから「市川雷蔵さんの御挨拶が・・・」ああヤッパリいらっしゃってたと、Sさんと顔を見合わせて思わずニヤニヤしてしまった。

 始めに拍手に迎えられて市川崑監督の御挨拶、過日集いの折の事が思い出された。花束を受けるにも何か戸惑っておられて、あの方異才といわれる監督さんとは思えない物静かな感じだった。さあ愈々雷蔵さんの番!紺の背広に同系のチェックのスポーツシャツ、日焼けしたお顔をほころばせて、拍手と歓声に迎えられて

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