⑤ 老師に見はなされた吾市は、淋しさの余り遊郭へ登楼するが、敵娼の女（中村玉緒）から“こういうところははじめてらしいな”といわれたりして、結局、金だけ払って帰る。

　

⑥ 市川監督から演技の指導を受ける雷蔵（左）と、吾市の亡父の親友桑井禅海の香川良介（右）、“わたしを見ぬいて下さい”と、最後の望みを託して頼む言葉も禅海に軽くいなされ、この夜吾市は火を放つ。

　裏切らぬものは、あの驟閣だけ。ふるえる手でマッチをすった。夜空に炎上する驟閣の美しさ。だが、捕われて実地検証で訪れた焼跡のみにくさ。吾市は、驟閣からも裏切られた。この世の望みを失った彼の体は、進行中の列車から転げ落ちたのだった。（八月第四週封切）

　吾市の放火で炎上する驟閣。実はミニアチュアセットだが、この他実物そっくりのものを洛西広沢池畔に建てたが、風致地区のため放火は許されなかった由。

毎日グラフ0７/２７/58