島崎藤村の名作「破戒」で三度現代劇取り組む市川崑監督と市川雷蔵

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『 破 戒 』
 原作は明治の文豪島崎藤村で、昨年末YTVより、市川染五郎主演で放映された。今度もTVと同じく市川崑監督の演出で映画化される。市川監督は、
 「原作がかかれた当時こそ、部落解放というテーマで意義があったが、今日ではそれだけでは意義がうすいと思う。だから、原作が部落問題を外から見た立場をひろげ、外の世界にも、中の世界にも双方に問題があるという風にし、人間の普遍的な問題、人間の魂の問題として描きたい。TVの場合、TVの機構上の限界があってやり通せなかったことを、フィルムの上で縦横に描いて行きたい。またこの作品を取り上げたのも、市川雷蔵というタレントがあればこそ食指が動いたわけです」
 と語っているが、雷蔵は。
 「歌舞伎時代に、坂東蓑助さんの丑松もみたし、木下恵介監督の映画も見ました。この丑松という人間像は満足しきれないけど、ひかれました。こんどのシナリオ(和田夏十)は、大変すぐれていて、読むたびに丑松という人間に共感し、同情して泣いてしまった。階級的偏見を越えたものがあると思う。この私の受けた感銘を、どうフィルムの上で観客に伝えて行くか、それだけが問題です」
 配役は猪子蓮太郎に三国連太郎、土屋銀之助に長門裕之、風間敬之進に船越英二、猪子の妻に岸田今日子、蓮華寺住職夫妻に、中村鴈治郎と杉村春子という異色の顔ぶれで、雷蔵の相手役お志保には、ニューフェイスから、藤村志保が抜擢された。

                                         (時代映画62年3月号)

 

 

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