さて、ここで『破戒』撮影中におけるいくつかの話題をお耳に入れていただきましょう。この作品は一月二十九日にクランクインしましたが、撮影前に行われるロケハンも京都郊外、大阪府下、滋賀県、奈良県、福井県大野・勝山方面、長野県小諸・飯山方面とその範囲も広く、時代感が出ないと困るだけに、ロケ地の選定でも四苦八苦という所。又、撮影前に行われるスチール撮影にも市川監督が立ち合う始末で、スチールロケに向う一行には、いつも市川監督が独特の絵コンテをつけて送るなど、相変らずの入念さ。グラビアにもある写真もスチールロケですが、これは深泥池という所で行われましたが、写真を写すだけに二日間かかったそうで、なんとも驚き入る次第。

 大作の初日は必ずといっていいくらいひうきしまった空気を反映してか、各スタッフも慎重そのもの。特にライトマンは名手宮川一夫カメラマンの指図を受け、一寸とした狂いでも見のがさずに、あれこれダメを押す風景は娯楽作品にみられない表情。宮川カメラマンは「話そのものからはいっていくのではなく、バックが話に食い込んでいくようにするつもりです。これはなかなかむずかしいことだとおもうが、原作のきびしさをバックにだそうというわけです。もっと白黒の画面を思い切り生かした陰影のあるムードを表現したいと思います」・・・と。

 聞く所によると、天然色用のフィルムを用いているそうです。なぜ天然色のフィルムを使用するのか、専門的に聞くのを忘れましてあしからず・・・。

 「セリフが文学的に長いのと、みんなから同情される人間的あわれさのにじみ出た美しい青年像を演技するという点で苦労する。」とは初日の雷蔵さんの感想です。二月二十四日、二十五日の両日福井県吉田郡志比村にロケに行った様子を聞きましたの、いろいろたずねてみました。

   

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