満々たる野心に燃えてクランク・インした総天然色大作

反逆児青年清盛の恋と斗争の絢爛たる絵巻を・・・

 ここ二年間映画化実現の日を待ち続けられて来た、吉川英治原作の『新・平家物語』は本誌先月号誌上でもお知らせしたように待望のクランク・インをしました。
 大映京都撮影所は今や『新・平家物語』一色に塗りつぶされ、巨匠溝口建二監督以下のベスト・スタッフが映画史上空前の大作と四つに組んで鋭意撮影を続けていますが、この絢爛たる色彩撮影の現場に、本誌が天然色カメラをたずさえて、その目もあやな一齣をとらえました。
 平安遷都三百五十年、藤原一族の貴族政治も漸く終る前夜の保延三年、西海の海賊を征伐した平忠盛、清盛親子は、その功績にもかかわらず、武士勢力の台頭を嫌う君側の公卿達の為に、何らの恩賞も与えられず、唯一人、貧乏公卿の藤原時信だけが、味方です。
 大映京都撮影所の、西オープン2500坪にこの時信邸の大セットが、一ヵ月の日数を費やして豪華な寝殿造りとして完成、このオープンセットで、焼けるような猛暑と闘いながら、時信の誠意に感じた清盛が訪れるシーンの撮影が進められていました。庭の一隅には清らかな泉がわいて、そのほとりで仕事着をつけた時子の久我美子と妹の滋子の中村玉緒のお二人が、暮しのたつきの機織りの染糸を濯いだり、乾かしたりしています。弟の時忠の林成年さんが軍鶏を抱いて遊びに飛び出そうとするところへ、市川雷蔵さんの清盛がやって来るのです。清盛は、あまりに貧しい身なり故に時子を婢女と間違えるのですが、それ以来彼女に強く心を引かれるのです。