平忠盛(清盛の父) 大矢市次郎

 気の弱さから、人生の半ば以上も、妻の意の儘に、うつうつと過してしまい、僅かにその夢を、清盛に托す。スガ眼の忠盛には、新派の長老・大矢市次郎が扮するが、枯淡の芸風は、後半、妻と別れてから起ち直った忠盛の人間としての芯の強さを、見事に演じて見せることであろう。

 泰子(祗園女御) 木暮実千代

 白拍子の身から、白河上皇の寵を受ける身となり、祗園八坂のほとりに囲われたことから、祗園女御と呼ばれ乍ら、一夜、叡山の僧の姿をその邸内で見とがめられ、上皇から見離されると共に、常に上皇のお供をしていた忠盛のもとに妻として嫁いだ泰子は、経盛、教盛、頼盛の三子をもうけ乍らも、遂には母の身を清盛に殴られ、夫のもとを去る女性だが、その気位はあくまで高く、常に女王の如くに振舞っている。けだし木暮実千代は適役といえよう。

時子 香川京子

 忠盛と泰子の仲人をつとめた平時信の長女、清盛に見初められ後に妻となるが、早くも第一部でもうける男子は、史上にも名君のほまれ高い、小松の内府重盛である。時子の存在は篇中、常にあたたかい家庭の雰囲気をかもし出す性格を持たされているが、この配役は他に適当な者を見出せない程の適役である。

時忠 林成年

 時子の弟、したがって、後に清盛の義弟となるわけだが、腕白で利発なこの若者は、やがて清盛の右腕ともなり、人多き平家にあっても、その存在を大いに恐れられるほどになるのだが、本格的には初めての時代劇に出る林成年が、父・長谷川一夫の血をどのように受けついで、この時忠を演じるか、大いに興味を持たれる処だ。成年の童心の光りをまだたたえている、その瞳には、きっとこの大役を見事に演ってのけるであろう期待が持たれるが、是非そうであってほしいと希うものである。

滋子 中村玉緒

 時子、時忠に次ぐ三人兄弟の末娘。可憐な存在である。

 平時信 石黒達也

 以上三人の父親。

木工助家貞 菅井一郎

 忠盛の家臣で、清盛にとってはうるさい爺ではあるが、またやさしい爺でもある。

 平六家長(家貞の子) 河野秋武

 時忠と共に、祭りの日に叡山の僧兵たちと争い、事件の発端をつくるが、一本気な、主人思いの若者である。

赤鼻の伴卜 進藤英太郎

 篇中きっての怪人物である。貧乏時代の清盛の何処に眼をつけたか、常に彼の味方となり、清盛の出世と共に、身も立身して、つには平家の台所を牛耳るに至る商人には、進藤英太郎が扮するが、楊貴妃の高力士の好演が、特に原作者の吉川英治に買われて、指名されただけあって、けだし適役。カラー作品であるだけに、その仇名の由来である赤鼻は、さぞかし強い印象を観る者に与えずには置かないであろう。

白河上皇 十朱久雄

 常に暗雲をはらむ空気は、この白河上皇の一挙手一投足によって起される、長谷川一夫が出演するならばこの役を・・・と云ったといわれる程の重要な役だが、むろんそれが実現していれば、脚本も、更に違った構成を見せたであろうが、この妖君を、十朱久雄はどのように演じて見せるか。

中宮亮秀成 春本富士夫

 昇殿を許された忠盛を、武士のくせにと、ひがんで宮中で悪戯を計るが、かえって清盛におどろかされ、気絶する意地の悪い臆病者の公家。

左大臣頼長 千田是也   関白 忠通 柳永二郎

 以上のほかに、主要キャストでまだ決定をみないものには、遠藤武者盛遠や、後に西行法師となる佐藤義清、また清盛の叔父である平忠正、忠正の後妻となる有子等があるが、これらの人々、詳しくは何れまた次号で紹介したい。

演技部の入口に貼り出された注意書