師走も押しつまって、邦画各社はいま正月作品のお膳立てに大わらわだが、そのなかにうごめくスターたちにとっては各人各様。去りゆく1958年に感慨も残ろうというもの。ここで、58年の映画スターたちをふりかえってみることにした。

 

男優

 トップ・スターは何といっても日活の石原裕次郎。彼は今年10本の作品に出ているが、そのもうけ額は40億をこすだろうといわれ、他社の重役連を大いにくやしがらせた。『嵐を呼ぶ男』から『紅の翼』までアクション物専門に手がけているが、演技者としての彼を満足させるものは『陽のあたる坂道』一本だけ。このへんに彼の今年の不満がある。しかし、この役に刺激されて小林旭、川地民夫などイキのいいタレントが生れたことは予想外の収穫。

 演技者として大きくクローズ・アップされたのは『ぶっつけ本番』ですばらしい味をみせたフランキー堺。テレビでも「私は貝になりたい」(NHK)など、貴重な才能をみせている。森繁久弥の今年は『暖簾』『みみずく説法』『人生劇場』とつづいたが、昨年の『夫婦善哉』のように目立った仕事はしていない。むしろ『裸の大将』一本でも小林桂樹のほうが実質的な仕事をしている。今年は“殺し屋スター”が大分のしてきたが、佐藤允、杉浦直樹、小高雄二、天本英世などがドスをきかせて意外にかせいでいる。

 時代劇は石原裕次郎の影響でいつものような精彩を欠いたが、それでも東映の中村錦之助、東千代之助という二人の侍の人気は相変らず。しかし、彼らも安閑としてはいられない強敵があらわれた。それは“歌える時代劇スター”として大いにのしてきた里見浩太郎の存在だ。彼により来年の時代劇地図は変るかも知れない。大映の市川雷蔵は単なる時代劇スターからの脱皮をねらったひとりで、『炎上』で見事その目的を達した。時代劇ではないが同じ大映で川崎敬三が注目される。“和製アンソニー・パーキンス”といわれるだけに二枚目としてかなりいい味。『氷壁』から最近の『白鷺』と着実にのし上っている。東映の江原真二郎も『裸の大将』以来すっかり自信をつけた。

 

女優

 山本富士子がこの世界の裕次郎的存在。人気、実力とも大きくクローズ・アップされ、『彼岸花』『渇き』『氷壁』と確固とした位置を占めてきた。この彼女のため若尾文子、京マチ子といったこれまでの一枚看板の影がうすくなってしまったのは気の毒。日活でも浅丘ルリ子、芦川いづみという若手が伸びてきて、ここの代表女優北原三枝が裕次郎のツマ的存在になってすっかりくすんでしまっている。東宝は団令子、白川由美、安西郷子、司葉子、八千草薫と群雄割拠だが、このなかでも団令子が目立ったところ。彼女と並んで期待されるのは『蟻の町のマリア』で主演した千之赫子、美人ではないがその庶民的容姿が人気を呼ぶことだろう。東映では佐久間良子、大川恵子、中原ひとみと多勢いるが、人気上昇中だった中村雅子が加藤嘉と結婚したためホサれてしまったのは痛い。

 有馬稲子もとうとう満足した仕事をしなかった組だが、『季節風の彼方に』の久我美子が地味ながら着実な足跡を残している。かせぎ高からいったら何といっても一頭抜いているのが東映専属となったの美空ひばり。その資産数億といわれているが、まだまだ“金のなる木”のスターであろう。また今年は昨年につづいてグラマー女優が多く出た。泉京子、筑波久子、三原葉子、毛利郁子、紺野ユカ、小宮光江、万里昌代と数え切れないが、そのいずれも秋風とともに主役クラスから消えてしまった。“ヘビのグラマー”毛利も『白蛇小町』以後パッとしないし、筑波久子もしばらく姿をみせない。泉京子もわずかに『人魚昇天』だけであとはすべてワキ役にまわっている。これは邦画界の清純ブームによる結果かもしれない。

 松竹では小山明子、杉田弘子といった連中が相変らず精彩がない。『悪女の季節』に主演したトレード組の岡田茉莉子があまりにあばれすぎるのか。『花は嘆かず』でヒロインとなっている有沢正子あたりがホープ・スターとはちょっと寂しい。新東宝では皇后役で売った高倉みゆき、和田道子として東映でくさっていたころの彼女にとっては異例の出世だろう。

 

デイリースポーツ大阪 58年12月19日