△ はじめてみた映画

小西 まア、みなさんも小さい頃は、まさかア映画スタアになろうなんて思わなかったでしょうけれどオ、はじめてみた映画はいつごろ?ひとみちゃん?

野添 よく覚えていないんですけど、小学校に上るちょっと前です。お母さんに連れられてチャンバラを見に行ったんですが、こんなこわいもの一生見まいと思いました。(笑)人が斬られたりするところしか覚えていないんです。

寿美 私もワアワア泣いたこと覚えているわ、たしか母ものだったようです。

雷蔵 ぼくは大阪あたりの二番館で小さい時から洋画をよくみてましたね、キャグニイの「汚れた顔の天使」とか「幽霊西へ行く」とか・・・。

小西 六代目がチャップリンの「黄金狂時代」を見てエ、いやアこんなうまい役者がアメリカにいるのか、なんて驚いてましたネ。

野添 小西さん、はじめてご覧になた映画は?私のお母さんがまだ生れない頃かな。(笑)

小西 わつぃはネ、今から五十年ほど前にイ、おやじと旅行してる時に香港で見たんですよ。まア、これが映画をみたはじめてでしょうねエ、もちろん外国ものだから日本語なんか入らない。そのころ日本には幻燈というものはあったけど、活動写真というものはなかったですねエ。

 昔の映画は今から考えるとずい分幼稚でしたね。

小西 俳優さんもなってみると楽しいでしょうねエ。

野添 楽しいというより、好きなんですね。だけど、はじめての頃はいやだったわ。「うず潮」という映画でいきなり佐田(啓二)さんの恋人役になったんです。

小西 恋人?いいネ(笑)

野添 どうみても妹にしか見えないんですもの。

寿美 はじめてはどうしても勝手がちがいますね、私なんかすぐ舞台のクセが出ちゃって、どうみても中性なんです。(笑)

 「水着の花嫁」がはじめてね。

寿美 ええ、生れてはじめて女になれるんで、とても嬉しかったんですけど、その映画のはじめてのシーンで、いきなり水着を着せられちゃったんです。(笑)

小西 いやア、それはたいしたもんですよ、はじめての映画でホントの女の美しさを見せたんでしょう、見たかったですね。それから、あれでしょうかア、恋人役をやるときにはご自分でも経験がないとうまくいかないんじゃァないでしょうかア。

野添 そうでしょうねエ。(笑)

小西 すると、恋とはどういうもんですか。

野添 さあ、どういうもんでしょう。先生の方がよくご存知じゃないですか(笑)

小西 ハゝゝゝこりア一本やられた(笑)