△ ラヴシーンうらのうら
小西 だけど、どうですかア、このごろのラヴシーンというものは外国のと同じように、やはり完全に接吻するんでしょうねェ、ちがう?ひとみちゃん。
野添 さあ・・・。ほっぺたにしたり、その直前まではいいけれど、ほんとにちゃんとしたのはまだ・・・。(笑)
小西 司さんはあったね、何だか忘れたけど、何か見たことがありますよ。
司 たいがいごまかしてますけど。
小西 いやだネ、ごまかさないようにやってもらいたいね。(笑)
司 そんな・・・。
野添 カメラがあるし、それに撮り方もあって。あっと思っているうちに・・・ほんとはやっていないんですよ。
小西 だけど見る方の側から言わせれば、たとえ、口と口とが合っていなくても気分が出なくちゃア、あんなことにならないんじゃアないの?
野添 でもわりと感じないものね、仕事だと思ったら・・・。
堺 わりとね。(笑)ぼくのラヴシーンはいつも思い入ればかり、はじめてのラヴシーンが安西郷子さんとやった「娘十八ジャズ娘」それからずーっと顔を見合せるだけで全然つまらない。(笑)
小西 男の人がその時冷たい感じでやったとしたら?
野添 知らん顔してやられると自分だけ芝居しているようでテレちゃう・・・。
小西 わたしだったらうまいだろうけどねエ、そういうことは・・・(笑)だけれども、どうも頭がはげていちゃアねエ。(笑)だけどまア、野球の選手だってそうなんだが、やはりおれが一番いい女だというような気持が、その芝居をやっているときに出てこないと気分が出ないんじゃないの。
野添 別に自分ではいい女とは思っていません。
司 台本をみますと、すばらしい美女なんて書いてあるでしょう。テレちゃうわ。そういう時は私はきれいななんだと思ってやってるわけね。映画だけぐらいはひけ目を感じないで・・・。
小西 私はだれにも負けないと感じるでしょう、ひとみ(瞳)は・・・。(笑)
野添 毎日鏡をみるたびに、なんていやな顔だ、あの人の顔がほしいなんてしょっちゅう思うんですよ。
小西 イヤー、たいしたもんです、わたしにもこんな娘がいるといいわいと思いますねエ。できれば女房ならなおいいけれど。(笑)どうでしょうあ川上さん。
川上 ほんとにおきれいですね。
小西 だいぶうまくなったね。今撮っている「背番号16」で新珠さんと一緒になったらだいぶうまくなったんじゃないの、近ごろ気分出しているじゃないの、手を握ったりして・・・。
川上 手は握ったことないですよ。
小西 貞操観念が強いからね、哲ちゃんは・・・。
雷蔵 川上さんは今の映画がはじめてですか。
川上 いや、だいぶ出ましたよ。エノケンさんの「ホームラン王」なんかにも出ましたし・・・。
小西 主役ははじめてでしょう。
川上 そうですね、主役といってもぼくが主役じゃないんですよ。だいたいぼくがこういうふうに育ってきたというのが主眼で、ぼくの若い頃はみな俳優さんたちがするんですよ。しかし映画ちゅうのはむずかしいですね、監督さんはそこで雰囲気出して下さいと軽くいうけど、冗談jyないですよ。
小西 それが出来るくらいなら苦労せんか。(笑)
川上 ここでセカンドへ打ってくれというならわかるが・・・。
小西 わたしもこの間「東京よいとこ」という映画にはじめてひっぱり出されたんですけど、わたしのセリフがマイクでしゃべる口調で書いてあるんですよ。これには参りましたねエ。私の口調はあくまで野球解説用で、それをふつうにやれといわれても調子が出ませんや。
堺 いや!まったく、そのとおりですねエ。(笑)
小西 トニアレ、野球もそうですが、映画というものはむずかしいもんです(笑)