△はじめて見染めた女の子

川上 鶴田さんの今やってる「眠狂四郎」は面白いね、ぼくはずっと読んでますよ。

鶴田 今度、はじめて覆面をつけましたよ。

川上 どうですか覆面は?

鶴田 暖かくていいですね。(笑)寒い時には覆面に限りますよ。(笑)

 時代劇のナターシャ・スタイル(笑)(映画「戦争と平和」でヘップバーンがかぶる防寒帽)名前も愉快ですね。

鶴田 この前、柴田先生にその由来をお聞きしたんですよ。そうしたらやっぱり覚えやすい名前が一番いいらしいですね。「大菩薩峠」の机竜之介の机のように日常生活に関係あるのがいいらしい。

 畳青之進てなもんですね。(笑)

鶴田 それで人間は、一日に一度は眠るんだから眠りにしちゃえというわけです。(笑)

小西 堺さんはじめてチョンマゲつけたはいつ?

 「丹下左膳」でしたよ。

小西 ほう、あなたの顔には合いそうだなア。

 やっぱりチン(犬のチンコロ)ですよ。(笑)罪ですね、ヅラをつけさせた意図がわかりますよ。(笑)

小西 堺さんはおとなしい方だと聞いているんですが、学生時代もおとなしかったんだろうね。

野添 ウソ・・・。

小西 おや、ウソといったよ。

野添 学生時代のお話を聞いたのよ。椅子を燃やしちゃったお話・・・。

小西 椅子を燃やすくらいならぼくもやった。

野添 それがすごく要領がよかった。

 いやー弱ったな、そこまで知られちゃしょうがない。ぼくの学校の講堂に誰も入れない地下室がありましてね、昼休みなると悪いやつが集まって、そこにある机や椅子を燃やして焚火をしたんですよ。ぼくもメンバーシップの一人でしたがね、あくる日の昼休みにまたそこへいったらいやに静かなんですよ。パッと入ったら皆がさかんに先生に怒られてる。ハッと思ったら、「堺か、なんできた」「ハッ、煙がモヤモヤしていましたので大切な講堂が火事かと思いまして・・・」(笑)そうしたら先生が皆にむかっていわく「どうだ今の話を聞いたか、堺を見習え!」(笑)あとでみんなが怒った、怒った。(笑)

小西 その調子じゃ初恋もずいぶんあったでしょうねエ。

 たくさんありすぎましたね。一年にニ、三回あるわけです。(笑)

雷蔵 ぼくは今日はじめて小西さんの素顔を拝見しましたが、市村羽左衛門にとてもよく似ていらっしゃる。若い頃はずい分、さだめし・・・。(笑)

小西 いやア、年寄りをからかっちゃアいけないなア、わたしが女房をもらったのが四十歳なんですよ。羽左衛門や六代目にいい加減に所帯をもてといわれて貰う気になった。

雷蔵 それじゃ、なおさらですね。(笑)

小西 初恋といっちゃアおかしいけれどォ、十六くらいの時に世にもきれいな人がいるなアと見染めた、といったらおかしいが、こんなきれいな人がいるかと思ったのが藤原あきさん。(NHK「私の秘密」のレギュラー)わたしが麹町六番丁にいた頃ですがア、あすこに大きな沼があってエ、それであの辺を溜池というんですがね、その近所に学習院の女学部があって、紫の袴をはいて通学している人たちの中で、ずばぬけてきれいだったね。

 ほんとにおきれいですね。

小西 あそこはまわりが汚いからなおさらね。(笑)雷蔵さんあたりそうとう早かったんじゃない?

雷蔵 いや、まだ初恋を語るのは早すぎます。