いずれ御一緒に

雷蔵 今日お会いしたらこのことをきいておきたいと思っていたんですけど、貴女はこの間東映に出た(「森と湖のまつり」)でしょう。

有馬 ええ。

雷蔵 それで、貴女の松竹との雇用関係はどうなっているんです?

有馬 私、松竹よ専属契約なんですけど、条件付専属契約ですから、他社出演二本の。

雷蔵 そうすると、あなたに大映に来ていただいて一緒にやることも出来るんですね。

有馬 ええ、口をかけて下さればね。前にも私東映に出たことあるんですけど、去年は二本のうちまだ一本しか他社に出ていないんです。東映は私を御ひきにして下さってね、「森と湖のまつり」でも香川(京子)さんのおやりになった役を持って来て下さったの、でも「人間の条件」とまるでダブってダメでした。東映では「人間の条件」の方を下りてなんておっしゃったけどそれも出来ないので、他の役をやったんです。雷蔵さんはダメなんですか?

雷蔵 僕はまだ条件付なんて契約って訳にはゆきませんよ。それほどになっていないもの。

有馬 そんなことないのに。口をかけて下さればいいんです。

雷蔵 松竹で承知してもらうより、あなたが気に入ったものでなければダメなんですね。

有馬 私が出来るものがありましたら・・・。他の会社のものに出ると気分的に変るし、刺激があっていいですね、「夜の鼓」は松竹配給でしたから、あれは他社出演には入っていないんですけど。

雷蔵 僕は今年一年は今まで通りの契約ですから、何かあったらお願いに行くかも知れませんよ(笑)

有馬 どうぞよろしくお願いします(笑)

雷蔵 僕はよその撮影所へ行ったことないんですよ、遊びや何かでは行きますけど、撮影ではね。京都は撮影所が近くにあるし、歌舞伎時代からの仲間も多いので、よく行ったことありますけど、東京はどこもありません。昔、日活には行ったことありますけど・・・。

−いつ頃ですか?

雷蔵 日活が新国劇の方なんかで映画を作っている頃、小林桂樹さんなんかが出ていました。

−初めの頃ですね。どう言うことで日活に行かれたんですか?

雷蔵 日活の俳優になるところだったんですけど契約してくれなかったんですよ。まだ歌舞伎にいる頃で、四月か五月です。その年の七月に大映に入ったんです。

−話は前に戻りますけど、京都の方が俳優さん同志がまとまっている様ですね、地理的な問題もあるのかもしれませんけど。

雷蔵 東京は無い様になっているようですけど、京都には俳優協会はちゃんとありますよ、何かあればやるって相談するし、年一回野球は集るし、青年部もあって月に一回は集ってます。

有馬 京都はせまいってこともあるでしょうけど、関西人と東京の人との気質の違いがあるかも知れませんね、だけど俳優のユニオンは必要だと思うの、野球だって東京はやってないけど私達には必要なことですから。

−俳優さんと言うのは受身の立場ですし、言われっぱなしのことも多いのですから団結して言うべきことは言う様になる必要はたしかにあると思いますね。早くそうなる様になってほしいですね。どうも、今日はお忙しいところありがとうございました。

雷蔵 (有馬さんに)何れ、仕事で御一緒出来る様に希望しています。

有馬 その時はよろしく。

雷蔵 こちらこそ。

(映画ファン59年3月号より)