あざやかだった雷ちゃん

辛抱強い人でした。かなり演技的なことで苦労していても、それを話さない人でした。冬の寒い日でも「寒い」とはいわず、夏の暑い日でも「暑い」といわない。

“坊ちゃん”という印象ですな。素直でよくユーモアを解していた。ヘラヘラいってるようで、よくスタッフのことを考えていた、その意味でよく気のつく人でもありましたね。

俳優としては、やっぱり、スターになる“花”だったね。柔らかでいて厳しいそして明るい芸でもあった。「若き日の信長」(の評判に対して)は、雷ちゃんのほうがよかったんだね。演技者として、雷ちゃんはあざやかなんだ。重厚だという俳優はいるけど、あざやかな俳優というのは珍しい。当人は将来、プロデューサーになりたいといっていたけど、はたしてどんなものを作っていたか。

現代劇では「陸軍中野学校」シリーズや僕の「ある殺し屋」などがあった。他の俳優ができない役柄をこなせたことは、雷ちゃんが時代のアカを捨てながら、現代の解釈にたって演技をしたからだと思う。

いずれにしても、雷ちゃんは、最後の映画スターでしたね。時代の激流にかかわりく・・・・。(「ミノルフォンレコード・日本映画名優シリーズ市川雷蔵魅力集大成」より)