たった一杯のコーヒーで二人はこんなに楽しいオシャベリをしたんです

「夜の河」の撮影で、京都に来ていた和ちゃん。「花頭巾」で活躍中の雷蔵さん。この大の仲良しがバッタリ出会ったからたまりません。「どこか、ダベれるところへ行こうや」と、さっそく小さな喫茶店に飛びこみました。ところで、和ちゃんはチャキチャキの江戸っ子、雷蔵さんは京都のボンボンとあって、東女に京男、話題はそこに落ち着きました。

☆京都よいとこ

雷蔵 京都は静かでいいだろ。和ちゃんが初めて京都へ来たのはいつごろ?

和子 去年の七月だったかしら。初めて行かれると思った日は、嬉しくて眠れなかったわ。私って京都へ来るまでは、街を歩いていれば、舞妓さんにたくさん会えると思っていたのよ。三条大橋や新京極あたりを、いつもダラリの帯で歩いてるんだと決めていたの。

雷蔵 東京へ行けば、火事とケンカが見られるというようなもんだね。(笑)

和子 でも、舞妓さんていいわねえ。ステキよ。もし私が男だったら、恋愛しちゃう。

雷蔵 ずいぶん惚れこんじゃったんだね(笑)

和子 それに、京都の街で一番いいのは、山が見えることね。

雷蔵 東京だって、和ちゃんの住んでいる九段から、富士山が見えるじゃないか。

和子 よっぽど晴れてなくちゃ。それにね、富士山て、私たちに親しみがうすいのよ。あれは東京の山じゃなくて、日本の山でしょ。比叡山みたいに身近に感じないの。

雷蔵 ゼイタクだね。そりゃあ(笑)じゃ、自分の家の庭に山を作ったらいい。(笑)

和子 そんなこと。(笑)だけど東京だっていいところあるわよ。

☆東女に京男

雷蔵 そりゃあそうだ。バーだって感じがいい。第一安いよ(笑)

和子 あら、雷蔵さんてそんなにお酒飲む?私といっしょのときは、食事してダンスするだけなのに・・・。

雷蔵 うん、エチケットを心得えているからな(笑)食事っていえば、東京の食べ物はうまいね。よく行ったね。銀座・浅草・渋谷・新宿と、たいていの盛り場は食べ歩いている。(笑)

和子 雷蔵さんて、だいたいがクイシン坊ね。(笑)

雷蔵 なかなか言うじゃない(笑)初めて会った時は、純情だったけどな、去年の五月だよ、パーティで南田洋子さんの言伝を言いに来たっけ。僕の前チョコントお辞儀して、“あの南田さんが都合で来られないので、よろしくお伝えくださいとのことでした”って、かわいかったね、あの頃は。

和子 そのときの雷蔵さんの返事も、とてもスマシてんの、“どうもありがとうございました”っだって。(笑)あれから一年しかたたないのに、口が悪くなったわねえ。この前だって、おい、和子、腹がへったんだ、何かねえか(笑)

雷蔵 もう、よそうや、口じゃかなわない。(笑)京男はおとなしいから・・・。

和子 口よりウデで来いって、いうんでしょ。かよわき東女をいじめちゃ、かわいそうよ(笑)

(明星56年8月号より)