雷蔵さんの勉強熱心

☆ また、一昨年盲腸の手術を受けたとき、外科の名手といわれるその病院長は井上流の京舞を習っていて、 

 「いつまでも教わる立場にいることが必要ですよ」

 と語ったことも、雷蔵さんの勉強心をかき立てられた一つの動機だという。

 いつも、映画は常に新しいものだ。くり返しはダメだ。創造こそ俳優の生命、というモットーを持ち、それを実行している雷蔵さんの人柄そのままを映したような、すばらしい計画ではありませんか。 

☆ ところで、『弁天小僧』以来、すっかり女装になれて、“山本富士子さんよりキレイやろ”と自信マンマンの雷ちゃんは、『蛇姫様』の劇中劇でも、『忠臣蔵』のお軽になって踊っている。それを見ていた相手役の嵯峨三智子さんが、

 「雷蔵さんのお軽はちょっと重たいみたいね」

 とからかうと、雷蔵さんはそのあまりにもスマートな、嵯峨ちゃんのからだを眺めながら、いい返した。

 「それじゃ、嵯峨さんは、琴姫さまというより、軽姫さんだネ」