勉強型

天然色の「新・平家物語」で主人公青年清盛の役と取っくんでいます。

こうした大役に当った私としては、これまでまだ幾分でもどこかに残っていた甘い気持ちを、完全にふっきり、演技や技巧というよりも、体でぶつかる意気ごみで日夜精進をつづけています。これを相撲の世界にたとえると、溝口監督という横綱の胸を貸してもらっている取的が私で、頭から身ごとぶつかっていっては、毎日火の出るような稽古をつけてもらっている形だといえましょう。

したがいましてこの秋の希望といえば、ちょうどその時期に封切られる「新・平家物語」における私の清盛の出来栄えいかんにかかわっていることがきわめて大きいわけです。

大阪カブキの名門、市川寿海の養子となり、雷蔵を襲名した。昭和六年生れ。。早くから、映画会社にねらわれていたのだが、これは、彼の均整のとれた顔形が注目されたわけであろう。競争を押し切って、大映が彼と契約したが、これは拾い物だった。

ただし、出た作品は、「幽霊大名」「千姫」あたりが、一応問題作。余りパッとしなかった。やはり、長谷川一夫のいる大映では芽が出ないのかとも思えた。ところが、今度、週刊朝日連載の「新・平家物語」で、主役の清盛に抜擢された。天然色。溝口健二の演出。こうそろえば、正に勝負どころである。雷蔵がかたくならずに、この大役をやり遂げれば、彼の前途は開けよう。