「いっちょうやりましょうや」 「やめといて つぶされるワ」

 

 

★食い気ばかり

大鵬 人の話でよく聞いてたけど、お二人はほんとうによく似ていますね。

雷蔵 橋くんどない思う。

      雷蔵さんに似てるなんて、もったいなくて。(笑)

雷蔵 おおきに。(笑)

大鵬 眼から下が似てますよ。

雷蔵 そうやね。『おけさ唄えば』(二人がはじめて共演した映画)見ると、ちらっとふりかえるような、瞬間的な表情がすごく似てるんで自分でもびっくりするね。

大鵬 素顔でもそうですよ。

雷蔵 いやいや、橋くんには若さがある。ボクのデビュー作の『花の白虎隊』のスチール写真見ると、ほんとうに似てるわ。

大鵬 もうだいぶ前でしょ。

雷蔵 だいぶ(に力を入れて)前とはなんですか。(笑)だけど橋くんをはじめ、いまの若い人は幸福やね。

      どうしてですか。

雷蔵 どうしてって・・・、ボクの十七歳のころなんか、終戦直後でたべるものがなくて、とにかく食い気一方やったもん。橋くんは戦争というもんを知らんやろう。

      戦争の終わった年が二歳かな。

雷蔵 わかっちゃいないんやなあ。(笑)

大鵬 そうですよ。

雷蔵 なにをわかったようなこというて。(笑)

大鵬 だってボクが十七歳のときは、相撲にはいりたてのころで、食い気一方だったもの。

雷蔵 ハッハッハッ・・・、食い気だけは同じや。(笑)しかしね、たべたくてもたべるものがなかったもの。一ヵ月に一回くらいありつく銀飯のうまかったこと。(笑)

     銀飯ってなんですか。

雷蔵 ああ、オレは悲しいよ。(笑)いつも君がたべてる、白いごはんのことや。

     ああ、そうですか。(笑)

雷蔵 だけど気持ちだけは、すごくはりきってたな。歌舞伎にはいったばかりで、周囲は古い人ばっかりやったけど、なんか新しい芝居をしたいと思って、扇雀さんなんかといっしょに、武智歌舞伎をはじめたのが、そのころだったもの。十七歳から二十歳くらいのころは、なにかやったろか考えてる年令やね。

     そうですね。

雷蔵 大関はどうや。

大鵬 はあ。(笑)

雷蔵 のんびりしてるね。やっぱりスケールが違うわ。(笑)

「どっちが雷蔵さんなんだろう」