☆夢は舞台で共演

雷蔵 橋蔵さんもこの頃は大分映画人らしくなってきたね。

橋蔵 雷ちゃんこそ、映画人らしくなってきたよ。でも、はじめにぼくを映画にさそってくれたのは雷ちゃんだったからね。

雷蔵 そうやったね、うち(大映)に入れってさそったけど、来てくれなかった。

橋蔵 映画に入る決心がついてなかったんだね。あの頃はまだ、舞台が忘れられなかったんだよ。

雷蔵 今でも舞台の味は忘れられないやろ。ぼくかてそうやものな。

橋蔵 そりゃねえ、映画とちがってじかに反応が来るからね。

雷蔵 舞台っていえば、君とぼくとは、まだ一度も一緒に芝居したことがないね。

橋蔵 そうだ。どうしてだろうね。東京と大阪と離れていたせいもあるけれど、一度やってみたいね。

雷蔵 映画じゃ、無理かもしれへんし・・・。

橋蔵 会社がちがうからね。でも、もしも、一緒に映画をとるとなったら、どんなものがいいだろうね。

雷蔵 そうやなあ、むずかしいね。映画の場合は“弥次喜多”かな・・・。

橋蔵 芝居ならあるけどね。映画なら、やっぱり“弥次喜多”なんかがいところかな。

雷蔵 芝居なら「お軽勘平」とか、「お染久松」とかね。

橋蔵 そうすると、女形はぼくっていうことになるね、雷ちゃんが立役で・・・

雷蔵 これはすごい。いっぺんやりましょか、なんとか機会作って。

橋蔵 実現したらすばらしいね。初顔合わせだ。でも女形はわりが悪いかな。

雷蔵 どうして?そんなことあらへん。

橋蔵 支度に時間がかかるもの

雷蔵 そのかわりきれいやないか。

橋蔵 (雷蔵さんの口まねて)そりゃしょうないな。ぼくのほうが若いんだから(笑)

雷蔵 まだ、あつかましいこという。年上のくせに。

橋蔵 だけど、お軽だって、お染だって、勘平や久松より年下だからね。

雷蔵 それなら姉さん女房の芝居をすればええやろ。

橋蔵 その時はぼくが立役に廻って(笑)

雷蔵 あかんわ。やっぱり年長者にはごまかされちゃう(笑)

(月刊平凡59年1月号より)