雷蔵 ふうーん。こりゃあ、いよいよノイローゼや。(笑)橋蔵クン、君東京にいってたん
だって?
橋蔵 昨日帰って来たところ、三日間休みが出来たんでさ、ちょいと東京の空気を吸
いに行ってたんだよ。
雷蔵 で、どうだった?東京は・・・?
橋蔵 とにかくさ、感覚がちがう。町でも商店のウインドーひとつにしてもね、東京に帰
るたんびに新しい感じがするんだよ。うん、東京の空気はちょいちょい吸わなき
ゃだめだよ。だいいち、流行におくれるものね。
雷蔵 (笑いながら)大川橋蔵は。東京の三日間何をしていたか!(笑)ちょいと知りた
いね。(笑)
橋蔵 私は品行方正ですからね、ええ、いいますよ。(笑)第一日目は「平凡」につかま
ってね、雑誌の仕事でつぶれまして、(笑)第二日目はシネラマを見に行った、
第三日目がこれまた雑誌の仕事でつぶれてさ、(笑)それでもね、その間をぬっ
てさ、『十戒』と「シネラマ」を見て来たよ。
雷蔵 そら感心だわ。ただしヒトリならね(笑)
橋蔵 あれ、ひどいなあ、てんで信用しないと来たね。(笑)時に、雷ちゃんはいま何を
撮っているの?
雷蔵 『七番目の密使』という幕末物だよ。橋蔵クンは何・・・?
橋蔵 ぼくはね、ひばりちゃんとの『花笠若衆』。それにダブリましてね、もう一本ある
の。忙しいよ、まったくやんなっちゃうね。つくづく自分の時間が欲しいと思うね。
雷蔵 君は暇な時は何をしてる?
橋蔵 そうだなあ、映画を見に行く位・・・(笑)そんなもんだよ、まったく暇がないもの。
雷蔵 マージャンはやらなかったかな?
橋蔵 ぜんぜん、どういうのかな、ぼくはね、パチンコもダメ。そういうことをやってる
時間がもったいなくてね、どうもだめなんだよ。
雷蔵 そりゃ、あかん。(笑)人生はエンジョイすべきだよ。(笑)
橋蔵 いいなあ、いいなあ、雷ちゃんは。(笑)
雷蔵 また、始まった。(笑)よういわんわ。(笑)なにがいいたいのかいな。(笑)
橋蔵 だってね、雷ちゃんは人間のニオイがするんだよ。(笑)ほのぼのとしたね。
雷蔵 これはどうもおおきに・・・どういったらええのかいな。(笑)
橋蔵 見た感じはさ、のほほんとしているが、シンはなかなかしっかりしとしている・・・
これが雷ちゃんですよ。
雷蔵 橋蔵クンは、ズルイ。自分のことはよういわん。(笑)

 

雷蔵さんの『七番目の密使』

橋蔵さんの『大江戸七人男』