新しい時代劇を目指してすすむ
市川雷蔵さん

の横顔

 市川雷蔵さんは、関西歌舞伎界でも梨園の名門として誉と誇りの高い若手花形の三羽烏とうたわれている。即ち中村扇雀、鶴之助、雷蔵と、この三人は明日の関西歌舞伎を背負ってたつ大物の卵と目された。今、まだ二十六才の若さである。

 『花の白虎隊』以来、矢継ぎ早な演技をみせて大映の幹部連を驚かせた。そして年六本の契約と映画は大映、舞台は松竹とハッキリした線をつくって、スッキリと割りきった仕事をつくる雷蔵さんに映画入りはと、その動機をお尋ねしてみる・・・。

 歌舞伎の演技よりも舞台に出演するときは、自分がどんな仕事や素振りで、又どんな発声法や動きを示しているか解らない。只単に、お客様の笑いと哄笑が相手によってそれの拙いとか粗い立場を知るのみです。それに引き替えて、映画は実によい。以前から興味をもっていただけになんといっても、映画は自分の演技を自分で見られることです。それから、セリフも必要以上に大きく入れたり長くしているところがすぐにわかりますから、映画による勉強法はとても、私にはプラスになってくれます。

 ファンレターは日本全国の若い方々から来ます。何分、方々の土地からの御手紙故、ローカルがあって面白いし、又、感激させられます。人気という点では、映画は舞台の比ではありませんね・・・と語る。