雷蔵、勝の目覚しい進境

本誌: 次にスタアさんの個人評なんですが、順不同で・・・。

深見: 市川雷蔵のファンはものすごくふえているでしょう。うちなんかでも、雷蔵ファンから電話がかかるのが、ものすごく多くなっているからね。だから、長谷川一夫の「銭形平次」あれだけに頼ることがなくなったということは、これからの時代劇の強味じゃないのかな。

日高: 今年からじゃないの、正月ものに「銭形平次」がなくなったのは・・・。今年はぜんぜん出さなかったということは、頼らなくてもいいということ・・・。(みわ註:59年12月27日公開「初春狸御殿」60年1月3日公開「二人の武蔵」)

宇野: でも雷蔵はむずかしいね。いわゆるあの人は非常にきれいでしょう、きれいな、そういうものに頼ったものばかりどんどん出していくわけでもないんだから、大映の場合はね。「ぼんち」みたいなものに長くつかまっていれば、それだけ非常に不利な点もあるしね。

深見: 大映の時代劇は、普通の作品で、大映のいわゆるバックボーンということもないかもしれないけれども普通にあれしようというのは、股旅ものとかああいうものじゃないの。

日高: それと、やはり長谷川一夫から市川雷蔵両方ともやさ型のほうでしょう、役者のタイプとしては。錦之助ほどでもないものね。やさ型の時代劇というやつは、大映の特色なんだろうね。松竹にもそういう傾向は若干あったし・・・。しかし雷蔵、勝新太郎のあとが出ないからね。本郷功次郎が出たけれども、現代劇専門になったから。

宇野: 勝というのは非常によくなったね。

日高: 進境がめざましいね。

宇野: 一時、長谷川の真似をしていたよね、最初は・・・。

深見: 雷蔵のように演技派になってしまったら困るんじゃないか。

日高: 演技派は雷蔵一人でたくさんだよ。やはり彼は二枚目半的なところがあるでしょう、やはり勝の場合はあれを生かすべきだよ。

宇野: 立回りうまくなった、勝は・・・。最近、作品はよくなかったけれども、「月影兵庫」あれのときの立回りなんてすごく迫力あったよ、「関の弥太っぺ」もよかったし・・・。

本誌: 立回りこそ俺の生きがいだということを言っていたけれどもね。けっきょく演技派雷蔵ということになれば、演技派に対抗する二枚目として、中村錦之助の演技派、大川橋蔵の二枚目ということで、雷蔵の演技派に対して、圧倒的な爆発的な人気スタアを一人こしらえないことには、なんか看板としてはうまくいかないんじゃないかと思うけれどもね。

日高: ある意味じゃ本郷功次郎が出てきたわけですよね。本郷功次郎はだいぶ人気が出ているらしけれども、しかし雷蔵から本郷功次郎はちょっと早すぎるよ。あいだにやはり勝新太郎がほしいし、その点、勝新太郎はまえの契約問題でモメ事があって、大映のほうも大いに考えたらしいけれども、本人も雷蔵とそうそう差をつけないという、作品もいいものを出すようにするというので、それ以来非常によくなったね。

深見: 根性が出てきたよ。

宇野: 雷蔵の受賞などに刺激されたとも言えるし・・・。