☆入浴シーンは大入満員

浩吉: 勝ちゃんこのごろ随分歌ってるね。

新太郎: この間ラジオで先生の歌を歌ったんですよ。

浩吉: ああ「五十三次待ったなし」ね。きいたきいた。「お父ちゃんの歌を歌ってるよ」って子供がおしえてくれたんでね。(笑)

新太郎: すみません。縄張りを荒しちゃって。(笑)「カンカン虫」を歌えっていうけれど、「五十三次」が好きなもんですから。(笑)

明星連載「七ツの誓い」で謎の黒覆面に扮して大活躍の東千代之介さん 

千代之介: 僕も今日枚方(大阪府)の菊人形で歌わされたんですよ。

浩吉: 僕はあそこでえらい目にあった。車が人波で全然動かなくなって。

千代之介: 僕もつきとばされるし、“暴力は敵だ”という旗印でも立てなくちゃ・・・(笑)

新太郎: 嵯峨ちゃんまたこんど入墨するんだって?

三智子: そうなのよ。それも背中に蝙蝠の入墨よ。私いやよ、いやよって逃げちゃった。入浴場面だけはしかたがないから入ったけれど、いやだったわ。私細いでしょ。(笑)

新太郎: 水着着るの?

三智子: そりゃそうよ見られちゃうもの。(笑)そして晒を巻いて、胸の上を手拭いでこうやって・・・千原さんもおやりになったでしょ。

しのぶ: 私も二度ばかりやったんですよ。

雷蔵: それじゃヴェテランだ。(笑)

しのぶ: 痩せているからいやだわ。(笑)

三智子: なんだかお風呂の芝居になると、急にセットの中に男の人が増えちゃうわよ。(爆笑)用もないのに入ってくるの。「お風呂んとこ終った?」ってきくから、「お昼からよ」っていうち、「じゃお昼からくるよ」だって。(笑)

千代之介: でも入浴シーンのときはうるさいでしょ。この間『魔像』のとき、高千穂さんも入られたんですが、みんなセットの外へ出してくれなきゃいやだって。みんな出ちゃったら撮影できなくなるし・・・(笑)困ったらしいですよ。

浩吉: 僕の映画は歌が出るから、どうしても風呂の場面が多くなる。歌う場合は風呂が合うというんでね。だけど、ほんとうの温泉ならいいんだけど、セットの温泉だから気分が出ない。(笑)

三智子: 底がざらざらして、ちょっと臭いんですもの。(笑)

新太郎: 先生の『鶴八鶴次郎』を見て驚いたんですが、志賀太夫の新内うまく入っていますね。声がとても似ていますよ。

浩吉: あの人のけいこを見ていると、青筋たててやってる。あのくらいやればあの声が出るかもしれないけど、そこまでやったらお客さんは笑いますよ。それで口に合わせて新内を入れたんですが、合わせるのがむずかしい。わからないように、僕がやってるように見せなければならないから。

新太郎: 新内も三味線むずかしい。

三智子: ほんとうに勉強することがありすぎちゃって困るわね。

浩吉: 千代之介さんは馬がうまいそうですね。映画界へ入るまではやらなかったんでしょう。

千代之介: 入ってもやらなかったんです。(笑)どうしても覚えなくちゃならなくなって始めたんですが、下手なもんで、馬がバカにするから、ウマウマしいからあまりやらないんですよ。(笑)

しのぶ: 千代之介さん得意のシャレが出たわね。ウマいウマい。(笑)

浩吉: これは驚いた。東映さんはコンビでシャレてる。(笑)

新太郎: 僕は二日間習って、三日目はもう走る場面なんです。大映のオツルという縁起でもない名前の馬なんですが、(笑)映画の方じゃ名優なんですよ。「用意」というと足を揃えるし、「ハイッ」というと走る。撮影所語は全部知っているんです。(笑)

『新・平家物語 静と義経』で、颯爽たる勝新太郎さんの那須与一