「・・・本年中には結婚したい」二月六日、市川雷蔵(30)は宣言した。「花柳界や女優ではなく、あたりまえの家庭から花嫁を」という彼の結婚の条件は、話題を呼んでいる。

 女優とは結婚しません

  雷蔵自身にきいてみよう。・・・二月六日、『好色一代男』のセットで、インタビュー。

・・・今年、結婚するそうだが?

 「したいと思っています。ただいま花嫁募集中。いい人がいたら明日にでも。という心境です」

・・・中村玉緒最有力というウワサがあるけど?

 「デマですね。彼女を結婚の対象として考えたことなんかありません。恋人でもない」

・・・だいいち、成田屋と成駒屋の握手など、結婚問題と何のかかわりもないと雷蔵はいう。結婚をきめるのは、“愛”であって、カビのはえたカブキの世界の“政治”ではない。

 「もし、そんな理由で玉緒ちゃんと結婚したら、それは彼女を大へんブジョクしたことになる。きざな言いかただけど、結婚の第一条件は“愛情”だ、とボクは思っています・・・」

ーすると、若尾文子は?

 「困るな、このさいハッキリしておきますが、女優さんとは結婚しません。ボクはね、男と女とは、二人あわせて一人だと思うのです」

・・・生涯を夫のかげにいて、夫のよろこびを無上の幸福とし、悲しみと苦しみをともにして、その成功にすべてをささげて、「この人を男にしたのは私だ」という誇りをいだいて、死ぬ。

 故らく夫人が、そうであった。雷蔵は、その母のような女性を妻にしたいとおもう。「男のワガママですね。でもボクは、そういうワガママを、よろこんで許してくれるような人がほしいのです・・・。女優さんにそれを求めるのは、無理ですから」

ーふつうの家庭のお嬢さんが対象になる?

 「そういうことです」

ーもう、だけか心当たりが?

 「いや、現在まったく白紙なのです。“女性自身”でさがしてくれませんか」・・・と笑った。じっさい、市川雷蔵の花嫁さがしは、もっか難航しているらしい。

 「この間も楽屋にきて、父さんにまかせるといいます。バカをいいなさい。自分がほんとうに好きな人をみつけたらいい。すると、『そないこというたかて、嫁さんさがすヒマも所もおまへん』というのです。なるほど、人気稼業は不便ですな。そこらのお嬢さんに『市川雷蔵です。ボクの奥さんになってくれませんか』といっても、先さまが本気にしませんでしょう」(寿海)

・・・鳴滝の雷蔵の家には、毎日のように、若い女性が電話をかけてくる。いまがチャンスだというので、デイトの申こみ、中には直接訪問をこころみるイサマシイお嬢さんや、母親といっしょにやってくる娘さんもある。「いちど会って話をしてみてくれませんか?きっと、ウチの娘が好きになります」といって、表を行ったり来たり。雷蔵、裏から逃げだす。