その一
デビュー当時

 雷蔵さんが映画人した当時、ニキビ面のその青年を関係者一同が皆「これはものになるのかなあ?」と思ったそうです。しかし、知らぬは・・・なんとかという所で「花の白虎隊」でデビューの作品から沢山のファンをもってしまった雷蔵さんだったのです。

 ある年の映画人対抗野球が後楽園で行われた時、バッターボックスに入った雷蔵さんに対する声援はほかのどのスターさんより多いのに驚いたのが、なんと永田ラッパ社長。丁度「新平家」の青年清盛の配役が難航している時だっただけに、この新人に大役を与える決心をした。とエピソードが残っているのです。雷蔵さんは与えられたチャンスを見事つかんだのです。演技者として世の人々に認められる作品を残したのです。

 アンケートの中に印象に残る作品としてあげられている事も、大いにうなずける事でしょう。

そのニ
炎上雑感

 名作「炎上」、これも又、数々の話題を残した作品でした。もちろん映画界での最高の賞を雷蔵さんが受けた事はファンの皆さんの胸の中に、今でもはっきり残っている事でしょう。

 しかしそうした話題のほかにもこんな事がありました。当会の会誌「よ志哉」で、はじめて撮影所取材を試みたのです。だが、雷蔵さんは、俳優としてこの作品にすべてを賭けていた時でしたので、その真剣さに素人記者もただ茫然とするばかりだったのです。いわゆる迫力がセット中に感じられ、一寸動いても息がつまりそうな、そんな雰囲気でした。又、すべてが大がかりで、炎上する驟閣寺は実物大で、京都大覚寺の境内に建てられ、そのまま置いても三年は保存出来るもの。ラストシーンの汽車の中は、京都から宮津線に乗って実際にロケをしたという事です。おかげで会誌の方も「炎上」特集の時は、はじめて雷蔵さんよりおほめのお言葉をいただきました。

その三
相手役あれこれ

 雷蔵さんほど沢山の作品に出ていると、相手役の数も相当数にのぼる。初めの頃は、峰幸子さんが専門であったが、嵯峨三智子さんとのコンビが誕生してからは、その息のあったコンビがファンの間では絶対の様でした。

  

 アンケートによるとやはり相手役としていいのは、他社の方々が多い様ですが、そうした方々と組んだものには又、いい作品が多く残っている様です。又、女優さんばかりでなく、男優さんのほうにも、最近は勝新太郎さんとは完全にレパートリーが変ったため組む事がない様ですが、やはり四ッに組んだものがほしいですね。デビュー当時とはだいぶ違って、面白いものが出来そうですし、又、若手でもまるっきりキャラクターの違う本郷功次郎さんと組んでも同じ事がいえましょう。しかし、今年に入っては、藤村志保、坪内ミキ子、高田美和、嵯峨三智子、万里昌代、高千穂ひずる、六月作品「手討」では、藤由紀子とそれぞれ違った相手役でやっているのも面白い現象だと思いませんか?