市川雷蔵が、最近某スポーツ紙記者の質問に答えて、結婚は三年以内にしますと宣言した。

ほかのチャランポランな連中としがって、割合に律儀なところのある雷蔵の発言だから案外本当のことを
いっているのかもしれない。
 さらに続けて
「三年以内だから、あるいは明日するかもしれませんよ。まわりの人たちから“早くした方がいい”とうるさく
すすめられていることもあるしね」
 と意味シンなこともいっている。
 それでは、果して彼のえらんだ人はだれだろうか?理想のタイプについてきかれた彼はこう答えている。
「背はチビより大きい方がいい、もっともボクより大きいんでは困るが・・・。色は白くて目はパッチリと大きく
可愛らしい人だな、歌の文句みたいだけど・・・」
 女優さんをお嫁さんにすることについては、
「前は絶対イヤだったけど、最近は考えが変ってきて、自分でいいと思ったら女優さんでもかまわない」
 女優さんでもかまわない・・・と考えが変ってきた点が微妙なところで、考えようによっては彼の意中の人
が女優さんの中に生じたのではないかとも取れるわけだ。
 去年あたり、彼は同じ大映のお嬢さんスター金田一敦子との仲をウンヌンされたことがあった。一目みてすっかり彼女が
気に入った雷蔵が、わざわざ彼女を東京から呼んで『若き日の信長』に共演させたりしたことから、こんなウワサが飛んだ
ものだが、どうやらこのロマンスは実を結ばずに終ったらしい。
 果してどっちがどっちに振られたのかはわからないが、雷蔵にいわせると
「金ちゃん(彼女の愛称)は家庭的ではないからアカン」
 ということらしい。

 東横デパートの重役の娘に生まれ、蝶よ花よと育った彼女にヌカミソくさい世話女房を期待した
雷蔵の期待がまちがっていたのかもしれない。それでは家庭的で、色が白く、目はパッチリとした
美人を彼の身近からさがしてみよう。
 ここで大きくクローズアップされるのが若尾文子である。
「若尾ちゃんは、菅原と別れてからきれいになった」
 というのが彼女を知る全ての人たちのひとしくみとめるところである。そして、雷蔵は最近上京す
るたびに、品川区荏原の若尾邸に足しげく訪れるというもっぱらの評判だ。作品でも正月の『初春
狸御殿』に続いて、近く撮影に入る『ぼんち』でも、共演することになっている。
 きれいになった若尾、度かさなる雷蔵の訪問、相次ぐ共演・・・三題ばなしめくこの三つを雷蔵、
若尾のロマンスに結びつけて考えるのはヒガ目だろうか。もっとも彼の場合は、裕次郎、北原三枝の

のような“陽動型”とちがって“潜行型”だから、果してどの程度まで進行しているかはうかがい知るべ
くもないが・・・。
 彼と仲のよい同じ大映の勝新太郎、東映の中村錦之助など時代劇スター連もみんな今ごろになっ
て結婚ばなしが持ち上がっているが、三人の中でいちばん“オクテ”にみられ、浮いたウワサなどあ
まり立たなかった雷蔵にいちばん先にこうした話題が持ち上がったのも皮肉なものといえるだろう。
 「ぼくが結婚するときは、だれにも知らせずにコッソリやるつもりですよ。通知を出すのは、すべて終
ってからですよ、ぼくの性格からいって、そういう地味なのがいちばん性に合うような気がするんや。
果してそううまく問屋がおろすかどうかはわからないけど・・・」
 という。
 裕次郎、マコの“陽動作戦”にキリキリ舞いさせられたマスコミが、こんどは雷蔵の“潜行作戦”に大
いになやまされそうな気配である。
(週刊実話より)