ファンレター迷作集

 雷蔵さんには一日に三百通のファン・レターがきます。なかにはとんだ傑作もあって、返事を書くにも困るそうです。ここにその迷作集をゴヒロウいたしましょう。

 明星愛読者のみなさんは、こんなのは書かないでくださいね。

 

  

 雷蔵さま ホントにステキね。ステキのパイのパイのパイの雷蔵さまのところへわたしはゆきたい。スバラシイわ、ゆめみたい。いつまでも変わらないでね、雷蔵さま。

 あなたの映画をみた夜は泣けくるのよひとりでに。アア悲しい雷蔵さま。きっとわたしを女中にしてください。わたしおセンタク好き。でも雷蔵さまのお家には電気センタク器あるでしょうね。わたしクヤシイ。きっと女中にしてください。一生のおねがいです。

 (雷蔵)「僕の家は男所帯なんですが、ちょっと女中さんだけは困りますね。ことにこういう女中さんじゃ、コワクなります」 

    

 市川さま 桜の花も見ごろの季節になり候。われは今年より14歳になり、スクリーンより貴殿の演技を嬉しくはいけんする者なり。書物によると貴殿はふぐを好むとの事。われは一度も口にしたことはありませぬが、ちょっととりかえしつかぬことになるとのことを耳にいたし候。ゆえにそのような物、あまり口にせぬようちゅうこくいたし候。

 本名、家族、後援会等お知らせ下され、同封いたした写真に貴殿のサインをして下さい。しかし貴殿の便りなるもの、とどかんばわれ悲しくも、又、うらめしく思い候。しかし貴殿が日々やくめにおわれているとの事なれば、われは楽しみに君が便りのとどく日を待ちこがれ候。

 では、京の君の健康と活役(ママ)を、われは東より祈らん。

 (雷蔵)「ふぐは昔から大好きですが、お陰さまで、取りかえしがついています。今後も一生懸命に活役(?)する覚悟ですから、充分に声援ねがいたく候」