若さと迫力誠実さと近代性

司会 本日はお忙しい中を御足労下さいましてありがとう御座いました。この座談会は会誌よ志哉発刊三周年を記念して開催致したものですので、よろしくお願い致します。さてまず皆様がファンになられた動機やらお話いただきましょうか。では、Cさんからいかがですか。

C 元来映画が好きで、いろんな映画を見ているうちに『美男剣法』を見て、とっても若さに魅力を感じたんですよ。それ以来見ていたんですが、後援会に入ったのは、浅草の電気館での実演を見て、素顔を見ましてね。益々ほれぼれしてしまったんですよ。それで会に入ったんですが・・・。

司会 若さに魅かれたというわけですね。次にAさんはいかがですか。

A 一口に言えば、インスピレーションですね。たまたま『鬼斬り若様』というのを見まして、ハッとする様な、ひらめきを感じたのです。オーバーですけどそれが運命の日だったんですね。それから『新平家物語』でしょ。我慢出来なくて年がいもなく後援会に入れていただきました。どこがいいのか具体的いえば、ノーブルな面差しとか、いぶし銀の様な声とか、シャープな近代的センスであるとか、数え切れないのですけれど(笑)やはり好きだということは理屈ではないのですね。

司会 なるほど、Bさんはいかがですか。

B 初めて見たのが『新平家物語』で、この映画の演技でグッときましたね。『炎上』の試写を見に行って、舞台で挨拶された雷蔵さんの言葉の中で、「大学を出ていない私が大学生の役をやれて嬉しい」といわれた時に、人間雷蔵にふれた様に思えた事、それにやっぱり若さと迫力を感じますね。

司会 Dさん、あなたは。

D きれいだから・・・(笑)。洋画ファンだったんですが、雷蔵さんの映画を見る様になって・・・雷蔵さんの誠実さが画面に出ていて好きになりました。それに好きになれば雷蔵さんの全部を知りたいし、どんな事でも聞きたいと思って会に入ったんです。

本格的現代劇を希望

司会 皆さんにそれぞれファンになられた動機をお話下さいましたが、次に雷蔵さんにやってもらいたい作品などありましたら・・・。

D そうですね。やっぱり誠実さを表現出来るようなもので、例えば山本周五郎さんのもの・・・。

司会 具体的におっしゃると・・・。

D 大炊之介始末、それから忠直卿・・・。

C 菊池寛のですね。あれは秋にやるとかいっていますけどね。

D 菊池寛の十三回忌を記念してでしょ。

A 私は自分が女らしい女(笑)というのではないですが、王朝物で、かげろう日記。

C 私は具体的にこれといってやってもらいたいと思うものはないですなあ・・・。

B 昨年から話題になっている『好色一代男』を是非実現して欲しいですね。それから、明治・大正物でなく、本格的な現代劇に出て欲しいですね。時代劇なら戦国時代のニヒルな武士、吉川英治氏の私本太平記の足利尊氏など・・・。

A 風と雲と砦はどうしたのかしら・・・。

D あれはずい分登場人物も多いでしょうね。

「大炊介始末」 大炊介は、相模守高茂の長子に生まれた。健康に賢い子に育った彼を家臣たちも「名君になられる」と楽しみにしていた。ところが18歳の秋、1人の家臣を突然手打ちにして以来、精神的に不安定になり、国許で過ごす間も酒を飲んで暴れたり、手打ちにしたり狂態は増悪するばかりだった。そんな若殿を見かねて相模守は、命をちぢめるように命令を下した。命を受けて国許へ向かった兵衛は、なぜ若殿が狂ってしまったのか探り始めた・・・。

 (藩主の長子にしては優しすぎたため、苦しむことになった大炊介。自分よりも周りのことばかりを考えてしまい、悩みを誰にも相談できず、結局自分が悪者になる道を選ぶのでした。

 そんな彼のことを小さい頃から知っていた兵衛は、彼の学友として城にあがり、共に勉強し剣術の稽古もしてきました。学友の中で誰よりも若殿にかわいがられた兵衛は、若殿を討つ役目を負いました。でも簡単に命じられた通りに討つことができず、国許での様子を聞いて回り、最後は若殿の元へ行って、話し合いをすることに。

 なぜ若殿は突然、狂ってしまったのか。若殿の側近たちはなぜ今でも彼を慕っているのか。悲しい大炊介の気持ちと苦しみ、そして家臣たちの慕う気持ちに涙が出そうになる話です。)