先ず一周年記念本当にお目出度う御座居ます。心からお慶び申し上げます。とあらたまりますと、さてどんな事をお書きしてよいやら一寸ばかりとまどいます。ファンの皆様方はスクリーンの雷蔵さんはもうすでに御存知の事ですし、今更私がとやかく申し上げる事も御座いません。

 そもそも私が初めて雷蔵さんにお目にかかったのは『踊り子行状記』の時でした。お互いに最初の共演の事でもあり、いささか気取っていて雷蔵さんは貴公子然とすまし、私もいくらかすましておりました。それが或る日ロケーションに参りますバスの中で雷蔵さんを始め勝さん林さん等と「早口言葉をやろうじゃないか・・・」という事になり、やり始めますと私はどうにも下手くそで全然舌が廻りません。何回いい直してもとんでもない言葉が飛び出して皆に大笑いされてしまいました。中でも一番大きな口を開けて一番大きな声を出して笑ったのが雷蔵さんでした。それ以来お互いにすまして気取っても通用しなくなり、私にとっても昨日の貴公子は“やんちゃで、毒舌家の親しみやすい坊ちゃん”?となりました。今でもあの時の楽しかったロケバスの出来事が鮮やかに想い出されます。

 その後何本か御一緒に本数を重ねるにつけ、次第に毒舌も辛らつさを増し、私も負けずに憎まれ口をたたきます。でも雷蔵さんの毒舌には不思議と腹のたたないユーモアがあり、スタッフの人にも皆に愛され、スクリーンでは見られない別の魅力が大いに会社の中を明るくさせて下さいます。

 時代劇の撮影で京都へ参ります時、雷蔵さんのあの毒舌にふれる事が最大の楽しみであり、余り笑わされてしわでも出来やしないかと心配でもあります。現在『人肌孔雀』で御一緒ですが、これには私が初めて男装の若衆姿で出ますが、又冷やかされるのではないかと、ひそかに案じています。

 今日はお仕事を離れて普段の雷蔵さんの極く一端なりでも・・・と思いましたが、どうも私の拙ない文ではあの生々しいわんぱく坊ちゃんをとらえる事が出来ませんでした、悪しからず。現代劇の『炎上』に意欲を燃えたたせていらっしゃる雷蔵さんに大いに敬意を表しますが、又楽しい夢のある時代劇でもどうぞファンの皆様を楽しませて下さいませ。そして今後の御活躍をファンの方々と共にこころよりお祈り申しております。

  

(よ志哉6号より)