風刺劇に野心燃やす

大映のホープ 向上一途の市川雷蔵

 関西歌舞伎の若手俳優だった市川雷蔵が、大映に入って五年になる。故溝口健二、衣笠貞之助、吉村公三郎、市川崑など巨匠、監督の指導に恵まれて演技的にも向上を見せ、最近の『炎上』では現代劇にも進出、好演をうたわれた。こんご長谷川一夫の座をつぐホープとして期待されている。

 “現代劇はこれからもいい素材さえあればとりたいが、わたしとしては年一本くらいが適当でしょう”と時代劇に生きる決意は変えていない。だが、俳優市川雷蔵をここまでのし上げたものは何か、ある人は彼の歯にキヌ着せぬ直情的な性格といい、ある人は持前の“政治力”だという。“いまの雷蔵君はともかくいいたいことがいえる立場にある。しかも、彼の場合、いったことは必ずやるファイトがあり、それが彼をここまで成長させたのだ”とは長谷川一夫重役の意見である。

 いま彼は風刺劇に自分の才能を生かしたいと望んでいる。“たとえばフランス映画に見られるような上品な風刺と笑いが念願”というのだが、ここいらで人間的にも円熟した味わいを見たいものである。