黄金の年’60にふさわしく、ファン待望の話題作がずらりと勢揃いする大映の明日を彩る作品展望!

続次郎長富士

 昨年大ヒットした『次郎長富士』の好評に応えて、前作を凌ぐ豪華強力のオールスタア大作として製作されるもの。本格的な股旅映画を渇望している映画ファンの期待は前作を上回るものがあり、前作とは異なった角度から前作以上の興趣篇としなければ続篇製作の意義は薄れる。従って前作にひきつづいてメガホンをとる渡辺邦男監督は脚本の八尋不二と共同で構想をねり、シナリオも慎重に推敲を重ねている。

 前回同様長谷川一夫の清水次郎長、勝新太郎の森の石松、本郷功次郎の小政と決ったが困ったのは市川雷蔵の扱い。というのは前作で雷蔵は吉良の仁吉で死んでいる。そこで新たな適役を想定中という次第。また女優陣も総出演を予定されており、その配役がまた話題を集めることだろう。

 この顔触れで、この監督、股旅映画の楽しさ、面白さのあらゆる要素をもりこんだ痛快で豪華な娯楽巨篇が期待される。

切られ与三郎

 『弁天小僧』の名コンビ、伊藤大輔監督と市川雷蔵主演で描く歌や歌舞伎おなじみの痛快篇。

 お富・与三郎の御存知源氏店の見せ場を、雷蔵の熱演でたっぷり見せる一方、全篇に新しい創意と解釈を加えることになる。

 すなわち、与三郎を旗本の生れとし、義弟に家督を譲るために家を出て市井無頼の徒に加わったものとする設定。一日、実家の危難と妹の苦境を知り、身を挺してこれを救う。お富とのロマンスに、更に親子愛兄弟愛を配し、また伊藤監督独特の壮烈、大規模な殺陣シーンを展開するという、盛りだくさんなサービスぶり。お富役には雷蔵と立派に共演できるだけの大物女優が配されるはずである。『罠をかけろ』と並んで関東お盆のスクリーンを飾る話題作。

 すでに夏までの封切番組にくみこまれている話題作は以上の通りだが、秋から年内公開予定で企画決定を見た作品では『白子屋駒子』(舟橋聖一原作、山本富士子主演)『鏡子の家』(三島由紀夫原作)の二大文芸巨篇がある。

 また企画が具体化を見ないまま、スタアの腹案となっている作品では、雷蔵の『安珍と清姫』(“娘道成寺”よりのロマンティック・ミステリー)、『好色一代男』(井原西鶴原作、増村保造監督)、『忠直卿行状記』(菊池寛原作)。若尾の『朝顔日記』、『女の勲章』(山崎豊子原作)、山本の『天の夕顔』(中河与一原作)、『夕鶴』(木下順二原作)等がある。

 こうした企画面の充実が額面通りに実現すれば大映の黄金時代も間近いし“日本映画界の主導権獲得”もまんざら夢ではなく、黄金の年の話題作展望にふさわしい結びになるのだが・・・。