素顔のスター
印象記

 

サラリとした人柄

 素顔で逢う雷蔵さんは俳優とかスターとか、そう言う感じのない人柄である。どちらかと言えば、鉄道省あたりの役人の様な、あっさりとさらっとしたところは、例えば大映本社の宣伝課の事務室などで見受ける印象がそれである。

 スターは近眼の人が多い、女優さんなどの場合も、近眼のスターの眼は、スクリーンで必ず美しい落着きと、うるんだ湖水の様な魅力をたたえるのがつねの様だ。高峰秀子、浅丘ルリ子、新珠三千代、有沢正子、杉田弘子、筑波久子、花園ひろみなどの皆さんの瞳はこれに属する。山本富士子、若尾文子など美しい瞳のスターだが、近眼でない人の瞳は、もっとキラリとシャープな動きをひそめている。それは、医学的にも証明の出来る連鎖反応や条件反射の健康な瞳孔の生理でもあるわけだ。

 だが錦之助、千代之介も近眼である。錦之助の瞳は、大きく求めるように見開いたときのアップは美しい、反対に千代之介の瞳は眉宇に憂愁を呼ぶ水平のまなざしであって、これは亦一種独特な哀感をたたえて人気のポイントをつくっている。

 雷蔵さんはむしろ錦之助と同じタイプの眼をスクリーンからファンに呼びかける。ただし劇での裂帛のせつなさは、その眼にこころのきびしさをあらわすことで男性美を発揮する。近眼の美しい瞳は普段は切れ長の細い目である。