みどりの風かおる五月の一日、しばらく振りでお逢いする機会を持つことが出来て、これほどうれしい事はありませんでした。私が映画に入ってもう五年近くなりますが、最近になってどうやら本当の映画俳優らしく成って来たような気がします。長くもあり、又短くもあったこの歳月を振り返ってみますと、後援会の力でもいろいろなことがありましたが、今や会名こそ平凡な名称ながら市川雷蔵後援会として、ついに本格的な団結にまとまったことはこれもまたみなさんと共におよろこびしたいと思います。

 デビュー当時から今日までレターや会合を通じて、みなさんのお気持についていろいろと考え勉強してきて、まことにファン気質というものは尊いものだとづくづく感じられるようになりました。今日の私のある蔭に私をこれまで励まし育てて下さった皆さんの御好意を決して忘れることは出来ません。

 いうまでもなく映画は大衆の支持によって成り立つものですが、その支持の中心は俳優に絞られている現状において、一層その感を深くします。それだけに後援会という機関はあっても、私が京都にあっていつも撮影の方が忙しいため、直接皆さんと語り合うような催しは多くて年に二回程度より機会が持てません。しかも今回の集いは皆さんの希望もあって、舞台で歌ったり踊ったりで、いわば私の裏芸を披露して楽しんでいただく一日でしたが、本当の気持をいうと、大変心に苦痛を感じておりました。

 出来る事なら舞台と客席を隔てたものでなく、同じテーブルで話し合えるようなお茶の会を持ちたいと念願している私なのです。それが短いわずかな一日の行事ですから、一対一でなく、一対何百、何千という関係では、到底皆さんの一人一人に御満足を得ることが出来ないわけで、この点大変申し訳なく思っています。しかし、ひるがえって考えてみますと、後援会の皆さんのほとんどすべてが、私の映画を通じてファンになって頂いた方ばかりだと思います。ですから、私も出演する映画の一本一本に心をこめて如何に皆さんにアピールするか、御満足を得る事が出来るか今後ますます努力することによって、今日の御不満の幾分でも償いたい心構えでおります。

 これからもレターに対しては出来るだけ返事を書きますから、スクリーンの上の雷蔵を御覧になって、大いに批判し、且つ育て上げて下さるようお願いいたします。また、後援会としても、私を育て上げる大きな支持になって終始変らぬ御鞭撻をいただきたいと思います。いかに力んでみても、私一人では映画俳優としての成長はおろか、その存在も望めない事はさきに申した通りです。私をささえて下さる皆さんの御厚意があってこその雷蔵なのです。その意味において私も今後勉強して、どんどん大きくなって行きたいと思いますから、皆さんも私にまけないように、どんどん大きくなって下さることを切にお願いします。こうした私の気持を充分お汲みとりの上、かつ将来に期待を持って頂く事を心から祈り、御挨拶に代える次第です。

 第一回春の集い(58年5月4日)