純潔は

ペギー: 雷蔵さんが結婚されるとしたら相手の理想像は、おきゃんのほうですか?それとも、おしとやかなほうですか?

雷蔵: おしとやかでもいけないし、おきゃんでもいけない。これはなかなかむずかしいところですよ。

ペギー: こわい注文がありそうね。貞淑な女性という、あの感じのあれは・・・

雷蔵: いわゆる貞淑な女というのは、どうも面白くないし・・・

ペギー: ちょっと不良性の感じのする女性があるでしょう、本質は不良じゃなくて。

雷蔵: これはわりと面白いですね。わがままをいってみたり、駄々をこねてみたりするぐらいでなくちゃ、一緒に生活してても面白くありませんね。(ただし、これは、雷蔵さんに対してだけ不良性があって、他の男には冷たいのが良いのだそうです。念の為)

ペギー: ところで、結婚の問題になると、一般論としてかならず提出されるのが、純潔かどうかということ。雷蔵さんは、奥さんをおもらいになる立場を仮定して、どういうふうに考えていらっしゃるのかしら。

雷蔵: 僕は別に処女でなければいやだなんて、思ったことはないですよ。むしろ、処女なんかもらったら困りますよ。(笑)

ペギー: それじゃ、やはり、精神的に純潔であればそれでいいというお考えね。

雷蔵: ペギーさんはどうですかね。男の童貞についてどう考えますか。このごろの女の人の中には、こちらが純潔なんだから相手も童貞であって欲しいという意見が、相当にあるそうだけれど。

ペギー: 私の結婚相手になる人だったら、もう、二十とか二十一とかいうわけじゃなし、それで、童貞・・・なんか気持がわるいわ。(笑)

雷蔵: ハハハハ・・・お年寄りの処女より、もう一つ気持がわるい。

ペギー:でも、処女でないからといって、また、雷蔵さんのようにそれを問題にしないといっても、わざわざ以前のことをいうべきじゃないと思うな。

雷蔵: 男も女もそうですよ。

ペギー: そんなことはいいじゃないの。過去は過去、いまはいま。

雷蔵: ぶちまけることはないな。知らないなら知らないでいい。なんでも話して理解をもとめることが、かならずしも幸福を招くとはいえませんからね。

ペギー: だと思いますよ、聞きもしないことを聞かされれば、やはり気になっちゃいますものね、。

雷蔵: ・・・知らぬが仏といいますからね。

雷蔵親孝行論

ペギー: 見惚れ、気惚れという話が出ましたけれど、ひと目惚れというのもあるでしょう。道を歩いているときとか、劇場の廊下なんかですれちがったりして。

雷蔵: ひと目惚れというのは、一緒に同席して話し合ったりしていて、そこでグッと感じてくるものがあるという・・・それじゃないかな。道なんか歩いていて、ああきれいな子がくるな、なんていうのはそれ以前で、すれちがい惚れとでもいうのかな。(笑)

ペギー: ところが、テレビを見て惚れて、ぱっと申し込むかたもいらっっしゃるしね。(笑)

雷蔵: うーん・・・。あれは今日的なものらしいですね。

ペギー: 私の場合だったら、そういうのはちっとこわい気がしますね。むろん、そういう生き方があってもいいと思いますけれど、私にはやはり、ジワジワ惚れだな。

雷蔵: このごろの若い男女というのは、親の教育がわるいんだな。学校にいっていようといまいと、お前の責任だということで、お小遣いにしても自給自足のアルバイトで稼げというふうに、アメリカ式の放任主義のような家庭が多いんじゃないかな・・・。

ペギー: ヘンなところで自由なのよね。そこへいくと、雷蔵さんは親孝行で、美談があるんですってね。

《本誌註:お父さん(市川寿海)がお年で歩かせるのが気にかかるから、自動車を買ってあげたい。ベンツで、5-6百万円するけれど、手持ちのお金が半分しかない。そこで大映の永田社長のところへいって借金を申し込んだ。永田社長はその親孝行にジーンときて、それならおれにまかせろといったといわれる。》

雷蔵: 僕は、まア、おやじ孝行ですよ。(ちょっとテレる)でも、別に美談だなんてものじゃありませんよ。おやじに車を買ったといっても、車は結局、僕のものだから、空いているときは僕も乗るわけなんですよ。親子は、気持とかお互いの意気がぴったり通じあう、つまり、精神的なつながりがいちばん大事だと思うんです。

ペギー: 雷蔵さんはずいぶん近代的な考えをもっていらっしゃる。インテリジェンスはあるし、柔軟性はあるし、平均点がいいわ。

雷蔵: おや、・・・これはちょっと。(マッタク、テレる)

ペギー: きょうは面白かったわ。どうもたいへん勝手なことを申しまして・・・。(笑)

(「若い女性」60年6月号より)