雷蔵さんと浦路洋子さんが共演するのは、この『弥太郎笠』がはじめて。ロケ先の余暇に、お二人に存分に話しあっていただきました。

浦路 雷蔵さんとはスタジオではいつも顔を合わせていますが、お仕事で御一緒するのは初めて、よろしくお願いしますね。

雷蔵 勝(新太郎)君とは多いのね、僕こそよろしく。『弥太郎笠』は子母沢寛さんの傑作で、今までも何度となく映画化され、先輩の方々が立派な見本を見せていられるので大へんだと思っているんだ。

浦路 私のお雪だってそう。まだ映画界に入って一年にもならない私ではとても・・・。

雷蔵 お雪の役は、前に山田五十鈴さん、岸恵子さん、高千穂ひづるさんだったね。

浦路 そうなんです。だけど私、股旅映画ってはじめてでしょう。約束事が多いんで・・・。

雷蔵 そう。それにやくざの世界はそれだけに限定して見ると浮いてしまうんだ。だけど、人間一般の世界として考えればそんなに不自然なものじゃない。その道徳観も変ではないと僕は思っている。

浦路 私の役お雪も含めて、父の虎太郎という親分が、今度の作品ではやくざの足を洗って、織物工場を経営するかたぎになる点がちがってるんですってね。

雷蔵 そう。森(一生)先生も生産的な明るい面が描かれていて、大変面白いといっておられた。だけど、今度の映画の第一の魅力は色彩だということだ。