歌舞伎の世界から映画界入りして早くも四年。四十余本の作品出演、映画の市川雷蔵と親しまれてきました。これは会社のボクに対する大きな投資のせいだと思っています。

 今年も『花太郎呪文』『忠臣蔵』『旅は気まぐれ風まかせ』それから目下は長谷川先生、川口浩君との競演もの『命を賭ける男』に水野十郎左衛門として出演中です。これをあげると次は森一生監督による『七番目の密使』が待ちかまえています。仕事のあるのはうれしいのですが、一寸休暇を・・・。やはり仕事も程々がいいです。

 『旅はきまぐれ風まかせ』は非常に明朗で、健康的な股旅映画です。(自分でいっていれば間違いありませんネ)現代劇畑の根上淳さんと共演しましたが、今までのボクの持味と違ったユーモラスな点を強調してみました。

 『命を賭ける男』のボクの水野十郎左衛門は徳川幕府の一寸した青年将校の暴れん坊です。水野というのは、幕府の政策に大不満で、そのハケ口を町人に向け、乱暴を働き、白柄組の頭領にまつり上げられていく中に、運命に押し流され、民衆の英雄、幡隨院長兵衛と対立し、最後はフロ場で殺し、英雄にしてしまうという悲劇の反逆児なのです。

 当時の、暴れ旗本の中にあってやはり頭領とあおがれるだけあって、水野はなかなかのインテリで自己反省もよくしています。それが逆に災いして、彼を悲劇に追い込んだのです。

 この近代人に相通ずる貴公子を、ボクはボクなりに自分のものに消化して、その人間的な苦悩というものを少しでも表現してみたいものだと思って演っています。さて思うだけのことをどれだけ表現できることやら・・・。

 いろいろ勉強も研究もしたいと思うのですが、これもしようあれもしようとあせっているのですが、どうもうまくいきません。

 『七番目の密使』というのは、またガラリと変った、時代劇には珍しいスリルとサスペンスに富んだ物語です。この作品でボクは新しい日本を創造しようとする勤王派の青年武士に扮し、活躍します。

 断頭台に上ろうとする二十八人の同志を救うために密書を抱いて京都から江戸へ向うのです。その道中、執拗な追及の手でたびたび窮地に追いこまれるのですが、どうしてどの道中を無事に突破するかというところに、この映画の興味とねらいがあるのです。せいぜいサッソウとした青年武士を演じてみるつもりです。

 以上のように“最近は非常にバラエティーのある役柄”に出演させてもらっています。股旅物や暴れ旗本や勤王の志士など・・・。これらの作品を次々と消化していくために、会社もボクも出来る限りの努力を続けています。ファンの皆さんもそのつもりで見て頂ければ幸福です。(大映スター)